長期金利(日本国債)の急変動は、不動産オーナーにどう効く?
―固定と変動の違いを初心者向けに整理
1月下旬、日本の長期金利(10年国債利回り)が一時 2.38%まで上昇し、
「日本版トラス・ショックでは?」という連想が市場で一気に広がりました。
背景には、選挙を巡る減税公約と財政懸念、そして海外の地政学・関税リスクを起点としたグローバル債券市場の動揺が重なった、という整理が報じられています。
その後は落ち着き、足元では10年利回りが 2.24%程度まで低下した、というデータもあります。
※(2026年1月26日時点)
※トラスショック
2022年の英国で起きた市場混乱。財源の裏付けが弱い大型の財政策をきっかけに国債が下落(利回り急騰)し、金融不安が高まり、英中銀が金融安定のために一時的な国債買い入れを実施した出来事。
不動産オーナーにとって大事なのは「国債が動いた=金融のニュース」ではなく、国債(長期金利)が動くと『不動産の価格(利回り)』と『借入コスト』の両方が動く点です。
ここから先は、居住用・投資用の両面で、どう影響が波及するかを回路ごとに解説します。
1|まず「長期金利」が上がると何が変わる?
不動産に効く4つの回路
・住宅ローン金利(固定が先、変動は遅れて)
・不動産価格(キャップレート・割引率)
・銀行の融資姿勢(貸し渋り・審査・条件)
・円相場・物価・建築コスト(賃料とコストの両方に影響)
住宅市場を読み違えないコツは、「どの金利が動いているか(長期=固定、短期=変動)」を切り分けて見ることです。
2|居住用(マイホーム)に起きること
影響①:固定金利は「先に」上がりやすい=長期金利の影響を受けやすい
ニュースで「長期金利(10年国債利回り)が上がった」と言われる局面では、固定金利型(フラット35、全期間固定、10年固定など)が先に上がるのが基本です。
影響②:変動金利は「後から」効いてくる(政策金利→短期金利の影響を受けやすい)
一方、変動金利は、長期金利(10年国債)よりも、日銀の政策金利など短期金利サイドの影響を受けやすい金利タイプです。
実務的には、多くの銀行で変動金利は 短期プライムレート(短プラ)等を基準に決まり、金利は半年ごとに見直される(4月・10月など)ケースが一般的です。
また、商品によっては「5年ルール(返済額はすぐ変えない)」「125%ルール(返済額の上昇に上限)」があり、金利が上がっても毎月返済額は急に増えない場合があります。
この場合、元金と利息の内訳が変わり、利息負担が増えて元金が減りにくくなることがある点は要注意です。
影響③:買える人が減る → 価格にブレーキがかかる場合もある
金利が上がると、同じ年収でも借りられる金額が小さくなり、購入できる層が減ります。結果として、特に“高くても売れる”エリアほど短期的に価格が伸びにくくなることがあります。
ここで大事なのは、不動産価格に影響するのは固定金利利用者だけではない、という点です。
なぜなら、日本の住宅ローン利用者は 変動金利が多数派(約8割)だからです。
そのため、長期金利上昇で固定が先に動く局面では「固定派が先に冷える」ことが起きやすい一方で、政策金利上昇が続いて変動にも波及してくると、より広い購入層の購買力に効いて 市場全体が冷えやすくなる構造があります。
3|投資用(収益物件)に起きること
投資用は、居住用より「金融」の影響が強く出やすいです。
影響①:短期プライムレート(短プラ)が上がると投資ローンの金利が上がる
金利上昇はそのまま返済増です。
特に変動比率が高いと、収支が圧迫されやすくなります。
影響②:物件価格に下押し圧力(利回りが上がる方向)
投資物件の価格は、乱暴に言えばこうです。
価格 ≒ 年間の儲け(NOI) ÷ Cap Rate
キャップレートは「安全運用(国債)+不動産の上乗せ(リスク分)」のように考えられ、国債金利が上がると、利回りも上がりやすくなり、価格は下がりやすいです。
→キャップレート上昇→価格下押しになりやすい、という見方がよく使われます。
4|「金利が上がった=不動産が全部ダメ」ではない
金利上昇には2種類があります。
・悪い金利上昇(不安が先行)
財政不安や市場混乱で上がる
・良い金利上昇(成長期待が伴う)
景気・賃金・家賃が伸びそうで上がる
後者なら、家賃や稼働がついてきて、価格調整が限定的になる場合があります。
実際、日銀も不動産市場について、需要要因(景気回復・投資需要)だけでなく、供給要因(資材費上昇や人手不足によるコスト増)など複数要因が価格形成に関わる点を整理しています。
現在は良い金利上昇に向かっていると言えそうです。
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