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押さえるポイントは
3つだけ!
耐震基準の意味を
理解する

押さえるポイントは3つだけ! 耐震基準の意味を理解する

日本は地震大国です。

コロナショックの最中、夜中の緊急地震速報にドキッとした方も多いのではないでしょうか。

近い将来、高い確率で南海トラフ地震が発生するとされ、甚大な被害が想定されています。

あなたはこうした将来の地震リスクにきちんと備えていると言えますか?

今回の記事では『 耐震基準 』には主に3種類あること、旧耐震基準の物件の注意点、耐震基準と税務、融資との関係などを解説していきたいと思います。

なお、今回も区分マンションを例にして解説します。

目次

3つの耐震基準を押さえよう

不動産の耐震基準は大きく3つに分かれます。

まず1つめが皆さんもよくご存じの1981年以降の新耐震基準、2つめが1971~1981年の旧耐震基準、そして3つめが1971年以前の旧々耐震基準です。

これらの用語の持つ意味を順番に解説していきます。

新耐震基準

出典:ダイヤモンドオンライン

新耐震基準とは1981(昭和56)年6月以降に建築された建築物に適用される耐震基準です。1978年の宮城県沖地震が教訓となり、1981年の建築基準法改正に繋がりました。

「震度5強程度の中規模地震では軽微な損傷、震度6強から7程度の大規模地震でも倒壊は免れる」

と定義されています。

上の図は1995年の阪神淡路大震災の被害状況をグラフ化したものです。

これを見ると新耐震とそれ以外(旧耐震&旧々耐震)で被害状況の差が歴然としていることがお分かり頂けると思います。

なお、被害状況を表す用語の定義を下記に示します。

大破:致命的損傷。建物として機能しない、建て替えの可能性大

中破:大規模な補修が必要。建替えの可能性も

小破:建て替えの可能性は低い。相応の補修が必要

軽微:軽微な損傷。建替えの可能性はきわめて低い

損傷なし:全く損傷がない

一つ注意して欲しいのが、1981年6月以降に竣工した建物=新耐震基準、とは判断してはいけないことです。

判断基準の確認方法としては建築確認申請書の日付が1981年6月1日以降である、ということです。

マンションなどは規模が大きくなると完成まで数年単位でかかります。

ですので1983年築とあっても、建築確認は1981年5月31日以前である可能性もあり、その場合は旧耐震基準となります。

購入しようと思っている不動産の築年数が新耐震か旧耐震か微妙な年代の時は、不動産会社に尋ねるか各自治体の建築指導課で確認しましょう。

旧耐震基準

全国のマンションストック戸数 出典:国交省 2013年

続いて旧耐震基準について解説していきます。

こちらは1968年の十勝沖地震が契機となり、1971年に建築基準法が一部改正されてから、上記の新耐震基準の制定までの間の建物を指します。

改正内容としては主にRC造建築物の強度についての規定が強化されて盛り込まれるようになりました。ちょうど高度経済成長期でRC造が増加した時期と一致しますね。

耐震基準としては『 震度5強程度の地震では、ほとんど建築物が損傷しない 』とされています。

余談ですが、この時期に建設されたヴィンテージマンションの代表例として、昨年15億円相当のダイヤ窃盗事件で話題になったキングホームズ代官山があります。

なお、上の図に示したように2013年の国土交通省の発表によると、新耐震以外(旧耐震&旧々耐震)のマンションは全国で約106万戸あるとされており、これは全体の6分の1となります。

旧々耐震基準

熊本地震で倒壊したマンション 出典:日経クロステック(2016/6/14)

最後に旧々耐震基準ですが、こちらは現行の建築基準法が制定された1950年から1971年の改正までの間に建築された建築物のことを指します。

この年代だと原宿駅前にある億ションの日本第一号にもなった、コープオリンピア (1965年築)はいまでも高値で取引されていますよね。

その他、日本最初の分譲マンションが誕生したのもこの時期です。

この年代後半に特に多いのがピロティ構造(1階が柱を残して外部空間になっている構造。1階が駐車場になっているパターンが多い)の建築物です。

上記の写真は2016年に発生した熊本地震で倒壊したマンションのものです。

このようにピロティ構造は地震に弱く、下記に述べる耐震基準適合証明書の取得も難しくなり、銀行ローンが厳しくなります。

この年代のマンションがリノベーションされて、お値打ち価格で売りに出されていることもありますが、安全面・ファイナンス面では難ありと言えるでしょう。

旧耐震&旧々耐震基準物件における注意点

ここまでで3つの耐震基準の意味・違いについては理解できたのではないかと思います。

この章では新耐震基準ではない物件に住む、あるいは投資する場合に注意しておきたいことをまとめてみます。

耐震診断はやらなくてもよい?

耐震診断・耐震改修の実施状況

旧耐震基準に基づき建設されたマンションのうち耐震診断を行ったマンションは34.0%となっており、そのうち「耐震性があると判断された」割合は40.8%であった。また、「耐震性がないと判断された」マンションのうち、「耐震改修を実施する予定はない」割合は38.1%であった。

(出典:平成30年度マンション総合調査結果 国土交通省 2019)

上の図は2019年4月に国土交通省が発表した、マンションの耐震化に関するレポートです。

これによると旧耐震基準の建物の多くが耐震補強はおろか、耐震診断すら進んでいないことがよくわかります。

耐震診断を実施しているか否かは不動産の重要事項説明の義務ですが、耐震診断自体は義務ではありません。

旧耐震基準の建物の売買を予定されている方は、耐震診断の有無は必ず確認するようにしましょう。

耐震補強にはいくらかかる?補助はしてもらえるの?

出典:マンション実態調査結果 東京都都市整備局 2013年

耐震診断の結果、耐震性が無い、と判断された場合、補強工事をするのかしないのか、の選択を迫られることになります。

上の図は東京都内のマンションにおける耐震改修工事費用の割合を示したものです。

半数近くが1000万以上のコストがかかっています。1億円を超えるケースも1割近くあります。

こうした膨大なコストを修繕積立金から支払うことになりますが、管理組合のキャッシュは大きく減るか、場合によっては銀行借り入れを余儀なくされるケースもあります。

こうした事態に備えて各自治体では耐震診断および改修工事に対する助成を実施しています。参考までに東京都のリンクを貼っておくので、気になる人は見てみてください。

耐震化助成制度

https://www.taishin.metro.tokyo.jp/jyosei/index.html

ローン減税には欠かせない!耐震基準適合証明書について

まずは用語の解説から。

耐震基準適合証明書とは、その名の通り、現行の耐震基準を満たしていることを証明する書類です。一般的には建築事務所の建築士に発行してもらうことになります。

そして、この耐震基準適合証明書は住宅ローン減税を利用する上では欠かせない書類の一つなのです。

ここでは住宅ローン減税の詳細については省略しますが、築年数25年を超えるマンション(RC構造)がローン減税を利用するには面積要件(登記簿面積50㎡以上)のほかに、耐震基準適合証明書の取得が必要となってきます。

よく誤解されているのが、

『 新耐震の物件ならローン減税使えますよ! 』

という不動産営業マンのセールストークです。

これは間違っています。

正しくは、

『 築年数25年を超えている物件でも耐震基準適合証明書を取得することでローン減税が使える 』

です。

この際、新耐震基準マンションであれば耐震基準適合証明書の取得は比較的容易ですが、旧耐震基準だと取得が難しくなることに注意してください。

住宅ローン減税が使えるかどうかは不動産会社に確認すれば教えてくれるはずです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

耐震基準と一口に言っても、建築時期によって違いがあること、古い物件を購入する際の注意点やローン減税の恩恵を受ける条件として耐震基準が重要な要素になることがお分かり頂けたのではないでしょうか。

また、新耐震基準であることや耐震基準適合証明書があることは銀行の融資判断にも影響を与えます。彼らも倒壊の恐れのある不動産に融資なんてしたがりませんからね。

物件の建築年度はもちろんのこと、耐震診断や補強工事の実施の有無、耐震基準適合証明書の有無や取得の可否なども是非チェックするようにしてください。

今回は以上になります。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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