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不動産コラム

タワーマンションを持ち続けるべきか?判断すべきは「今の相場」ではなく将来の運営リスク

タワーマンションを持ち続けるべきか?判断すべきは「今の相場」ではなく将来の運営リスク

なぜ今、保有判断を見直すべきなのか

タワーマンションを所有している方から、よく聞かれる相談があります。

「今、価格が上がっているから持ち続けた方がいいですか?」

「相場が高いうちに売った方がいいですか?」

「将来も資産価値は残りますか?」

もちろん、今の売却価格や周辺相場を見ることは重要です。しかし、タワーマンションの保有判断で本当に見るべきものは、価格だけではありません。むしろ重要なのは、そのマンションを将来にわたって維持・管理できる体制があるかです。

タワーマンションは、単なる住まいではなく、多数の区分所有者で共同運営する「大きな建物設備」です。建物が大きく、設備も多く、関係者も多い。だからこそ、価格だけを見て「まだ上がりそうだから持つ」と判断するのは危険です。

修繕積立金は「毎月の固定費」ではなく、将来の建物を守る資金

まず確認すべきは、修繕積立金です。

修繕積立金とは、簡単に言えばマンションの将来の修理代を、毎月少しずつ貯めておくお金です。

例えば、外壁、防水、配管、エレベーター、機械式駐車場、共用部の設備などは、年数が経てば必ず修繕・交換が必要になります。そのときにお金が足りなければ、追加で一時金を集めたり、借入をしたり、修繕を先送りしたりすることになります。

国土交通省も、長期修繕計画は将来の修繕工事を計画し、必要な費用を算出し、月々の修繕積立金を設定するために作成するものだと説明しています。つまり、修繕積立金は「安ければ嬉しい費用」ではなく、建物の将来価値を守るための原資です。

ここで注意すべきなのは、今の修繕積立金が安いマンションほど安心とは限らないという点です。

むしろ、現在の金額が低すぎる場合、将来大きく値上げされる可能性があります。国土交通省は2024年6月にガイドラインを改定し、段階的に修繕積立金を増額する「段階増額積立方式」について、予定通りの引き上げができないと修繕積立金不足につながるおそれがあるとしています。

例えば、今は修繕積立金が月2万円でも、数年後に月4万円、5万円へ上がる可能性があります。所有者にとっては毎月の負担増です。投資用で貸している場合は、手残りが減ります。将来売るときには、買主が「このマンションは維持費が高い」と判断する可能性もあります。

つまり、見るべきは「今いくらか」ではありません。将来いくらになる予定なのか。その値上げは現実的なのか。積立金は本当に足りているのか。ここまで確認する必要があります。

大規模修繕は、タワーマンションほど複雑になりやすい

次に見るべきは、大規模修繕です。

一般的なマンションでも、築年数が進めば大規模修繕が必要になります。しかし、タワーマンションの場合は、建物の高さ、設備の多さ、共用施設の充実度によって、修繕の難易度が上がります。

例えば、タワーマンションには非常用エレベーター、タワーパーキング、内廊下の空調設備、スプリンクラー、非常用発電設備、エスカレーター、セントラルヒーティングといった設備があることがあります。

国土交通省の検討会資料でも、超高層マンションには通常のマンションではあまり見られない特有の設備があり、それらのメンテナンスには高額な費用を要する場合があると指摘されています。さらに、こうした超高層マンション特有の修繕項目が、長期修繕計画に必ずしも十分に盛り込まれていないケースがあることも課題として示されています。

ここが非常に重要です。長期修繕計画に書かれていない設備は、将来お金がかからないという意味ではありません。単に、まだ計画に十分反映されていないだけの可能性があります。

例えば、内廊下の空調、タワーパーキング、共用施設、非常用設備などは、普段は便利で高級感を演出してくれます。しかし、将来の更新時には大きなコスト要因になります。

新築時や築浅時には、共用施設が豪華なほど魅力的に見えます。しかし、築20年、30年と経過したときには、その豪華な設備が「維持費の重い資産」に変わることがあります。

管理体制が弱いマンションは、価格が高くても危険

タワーマンションで見落とされがちなのが、管理体制です。

マンションは、一人の所有者が自由に修繕や建替えを決められるわけではありません。区分所有者が集まり、管理組合で意思決定をします。つまり、どれだけ立地が良くても、どれだけ建物が立派でも、管理組合が機能していなければ、将来の修繕や資産価値維持が難しくなります。

特にタワーマンションは戸数が多く、所有者の属性もさまざまです。実際に住んでいる人、投資用で貸している人、海外在住の所有者、法人所有など、利害関係が複雑になりやすいです。

国土交通省の資料でも、超高層マンションでは入居者の属性の差により合意形成が難しくなる可能性や、大規模マンションでは管理費・修繕積立金など取り扱う金額が大きく、業務が複雑化することが指摘されています。

管理体制を見るときは、総会は定期的に開催されているか、管理組合の議事録は整っているか、修繕積立金の滞納は多くないか、管理費と修繕積立金はきちんと分けて管理されているか、長期修繕計画は定期的に見直されているか、大規模修繕の工事内容や見積もりは透明性があるか、管理会社任せになりすぎていないか、といった点を確認すべきです。

国土交通省の管理計画認定の基準でも、管理者・監事の設置、定期的な総会開催、管理費と修繕積立金の区分経理、修繕積立金の滞納対応、長期修繕計画の見直しなどが確認項目になっています。これは、今後の中古マンション市場で「管理の良し悪し」がより重視されていく可能性があることを示しています。

将来の売りやすさは「立地」だけでは決まらない

タワーマンションは、立地が良ければ売れる。これは一面では正しいです。しかし、将来の買主は価格だけを見て判断するわけではありません。

買主が見るのは、管理費はいくらか、修繕積立金はいくらか、今後の値上げ予定はあるか、大規模修繕は終わっているか、次の修繕で追加負担が出ないか、管理組合は健全か、建物の古さに対して価格が妥当か、住宅ローンが通りやすい物件か、賃貸に出した場合に利回りが成り立つか、といった項目です。

たとえば、同じ8,000万円の部屋でも、毎月の管理費・修繕積立金が合計3万円の物件と、合計8万円の物件では、買主の印象は大きく変わります。

毎月5万円の差があれば、年間60万円の負担差です。投資家目線で見ると、年間60万円の手残りが減るということです。

仮に投資利回り4%で考えると、年間60万円の収益差は、単純計算で価格に約1,500万円分の影響を与える可能性があります。計算式はこうです。年間60万円 ÷ 4% = 1,500万円。

もちろん、実際の価格は立地、築年数、眺望、階数、間取り、市況などで変わります。ただし、毎月の維持費が高くなると、買主の予算や投資判断に影響することは間違いありません。

つまり、将来の売りやすさは「駅近だから大丈夫」「タワマンだから大丈夫」だけでは判断できません。維持費と管理リスクまで含めて、買主に選ばれる物件かどうかを見る必要があります。

「相場が良いから持つ」は、判断として浅い

タワーマンションの価格が上がっているとき、人は保有を続けたくなります。「まだ上がるかもしれない」「今売るのはもったいない」「周りも高く売れている」。こう考えるのは自然です。

しかし、保有判断で見るべきなのは、今の価格だけではありません。本当に確認すべきなのは、次の5つです。

1つ目は、今の価格は割高か、妥当か。周辺の成約事例、同じマンション内の売出事例、同エリアの供給状況を見ます。単に「買った時より上がっている」だけでは不十分です。

2つ目は、今後の修繕積立金は上がるのか。現在の金額だけでなく、長期修繕計画上の値上げ予定を確認します。将来の月額負担が大きく上がるなら、保有コストも売却時の印象も変わります。

3つ目は、大規模修繕の内容は現実的か。外壁や防水だけでなく、エレベーター、駐車場、配管、空調、防災設備、共用施設などが計画に入っているか確認します。特にタワーマンション特有の設備が抜けていないかは重要です。

4つ目は、管理組合は機能しているか。総会、理事会、議事録、滞納状況、会計管理、工事の透明性を見ます。管理組合が弱いマンションは、将来の修繕や意思決定で問題が起きやすくなります。

5つ目は、将来も買い手がつくか。今は人気でも、将来の買主が「古いタワマン」「維持費が高い」「修繕リスクが大きい」と感じれば、売却に時間がかかる可能性があります。価格が高い物件ほど、買主の目も厳しくなります。

保有継続に向いているタワーマンション

では、どのような物件なら持ち続ける判断がしやすいのでしょうか。保有継続を検討しやすいのは、次のような物件です。

立地の競争力が強く、駅距離、眺望、階数、間取りに明確な優位性がある。管理組合がしっかり機能している。長期修繕計画が現実的に見直されている。修繕積立金の値上げ予定が説明可能な範囲にある。大規模修繕の履歴や今後の計画が明確。賃貸需要が強く、空室リスクが低い。維持費を差し引いても収支が成り立つ。

このような物件であれば、短期的な相場変動に振り回されず、中長期で保有する選択肢もあります。

売却を検討した方がよいタワーマンション

一方で、次のような物件は注意が必要です。

修繕積立金が明らかに低い。将来の値上げ予定が大きい。長期修繕計画が古い、または内容が薄い。タワマン特有の設備更新が計画に入っていない。管理組合の議事録や会計情報が不透明。滞納が多い。大規模修繕の合意形成が進んでいない。周辺に新しい競合タワマンが増えている。毎月の維持費が高く、買主が限られそう。価格が上がっている理由が市況頼みで、物件固有の強みが弱い。

このような場合、「今の相場が高いから持ち続ける」という判断は危険です。価格が高いうちに出口を取る方が、結果的に合理的なケースもあります。

まとめ:タワマンの保有判断は「価格」ではなく「運営リスク」まで見る

タワーマンションを持ち続けるかどうか迷ったとき、多くの人は今の相場を見ます。しかし、本当に見るべきなのは、次の問いです。

このマンションは、将来も適切に修繕されるのか。管理組合は機能しているのか。修繕積立金は足りているのか。大規模修繕の費用は現実的に見込まれているのか。将来の買主にとって、魅力ある物件であり続けるのか。

不動産の価格は、最終的には「買いたい人がいるか」で決まります。そして買主は、将来の維持費や管理リスクも含めて判断します。だからこそ、タワーマンションの保有判断では、今の価格だけを見てはいけません。

価格は表面的な数字です。本当に見るべきなのは、その価格を将来も支えられるだけの管理・修繕・運営の土台です。

タワーマンションは、良い物件であれば非常に強い資産になります。一方で、管理や修繕のリスクを見誤ると、将来の負担が重くなる可能性もあります。

「高く売れるか」だけではなく、「持ち続けるリスクに見合う資産か」。この視点で判断することが、タワーマンション所有者にとって重要です。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の物件状況や管理組合の実態、法的判断は、長期修繕計画書・管理規約・物件状況によって異なります。個別の判断にあたっては、不動産会社、税理士、弁護士、金融機関など、必要に応じて各分野の専門家へ確認することが望ましいです。

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関連プロフィール

橋本裕介 株式会社TESキャピタル代表取締役のプロフィール写真
橋本裕介|株式会社TESキャピタル代表取締役

橋本裕介
株式会社TESキャピタル代表取締役。投資用不動産オーナー向けに、売却・出口戦略、サブリース契約の見直し、管理改善、不動産に関する選択肢整理、資産形成に関する情報提供を行う。著書に『あなたをインフレ時代の勝者にする 投資初心者向け 日本の強みを活かした新・資産運用術』がある。

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