最終更新:2026年8月7日
「今売るべきか、もう少し持ち続けるべきか」。
投資用マンションの売却時期に、すべての物件へ共通する一つの正解はありません。特定の築年数、表面利回り、毎月の赤字額だけで決めると、管理改善や修繕、保有継続という選択肢を見落とす可能性があります。
判断に必要なのは、現在の手残り収支、将来の支出、売却した場合の手取り額、市場での売りやすさ、保有目的を同じ条件で比較することです。本記事では、売却を前提にせず、確認すべき順番を整理します。
1|利回りではなく、実際の手残りを確認する
表面利回りは、年間賃料を物件価格で割った数値です。管理費、修繕積立金、固定資産税、保険料、賃貸管理料、空室、原状回復、設備交換、ローン返済などを含まないため、表面利回りだけでは保有中の実態を判断できません。
まず、次の項目を月額または年額で揃えます。
- 実際に受け取っている賃料と共益費
- 管理費と修繕積立金
- 賃貸管理料やサブリースによる差額
- 固定資産税・都市計画税
- 火災保険などの保険料
- 原状回復・設備交換・突発修繕の実績
- 空室期間と募集費用
- ローン返済額、金利、残存期間
これらを差し引いた手残りが少ない、または赤字であっても、それだけで売却が必要とは限りません。管理委託費、募集条件、サブリース契約、修繕方法などを見直すことで改善できる場合があるためです。
一方、改善後も持ち出しが続き、今後の修繕や空室によって赤字が拡大する可能性が高い場合は、売却を含めた比較が必要です。重要なのは、一律の「月額○万円以下」という基準ではなく、その物件で改善できる費用と改善できない費用を分けることです。
2|築年数だけでなく、修繕と管理の状態を見る
築年数は売却価格や買主の資金計画に影響する要素の一つですが、「築○年を超えたら売る」という共通基準はありません。
同じ築年数でも、長期修繕計画、修繕積立金の残高、管理組合の運営、過去の修繕履歴、賃貸需要によって評価は変わります。
確認したい資料は次のとおりです。
- 長期修繕計画
- 修繕積立金の残高と値上げ予定
- 大規模修繕の実施履歴と次回予定
- 管理組合の総会議事録
- 給排水管、エレベーター、給湯器などの更新状況
- 一時金徴収や管理費改定の予定
- 耐震性、建物状態、金融機関ごとの融資条件
旧耐震基準や築年数の進んだ物件では、耐震性、修繕計画、買主の融資条件など確認項目が増える傾向があります。ただし、立地、賃料、管理状態によって市場評価は異なるため、築年数だけで売却を決めることはできません。
3|市況は、全国平均ではなく対象物件の市場で確認する
全国や首都圏の平均価格が上昇していても、すべての投資用マンションが同じように売れるわけではありません。
対象物件について、次の情報を確認します。
- 同じマンションや近隣の成約事例
- 現在販売中の競合物件
- 賃料と空室期間
- 駅距離、面積、間取り、階数、方角
- 管理状態と修繕状況
- 入居中か空室か
- サブリースや賃貸借契約の条件
- 買主が利用できる融資条件
金利上昇は買主の借入条件や収支判断に影響する可能性がありますが、価格への影響は物件、賃料、地域、買主層によって異なります。将来価格を断定するのではなく、現在の成約事例、販売在庫、賃貸需要を継続して確認することが重要です。
4|今売却した場合の手取り額を確認する
売却価格と手元に残る金額は同じではありません。
売却時の資金を確認する際は、概ね次の項目を整理します。
売却代金
- ローン返済額
- 仲介手数料
- 登記・印紙・金融機関等の費用
- その他の売却費用
- 譲渡所得に対する税金
= 売却後に残る資金の目安
譲渡所得は、購入価格と売却価格の単純な差額ではありません。取得費は建物の減価償却の影響を受け、譲渡費用や適用できる特例も個別に異なります。
所有期間は、売却した年の1月1日時点で5年を超えるかどうかにより長期・短期へ区分されます。また、3,000万円特別控除は居住用財産を対象とする制度であり、賃貸投資用物件へ当然に適用されるものではありません。
TESキャピタルは、不動産の査定、ローン残高、売却費用、手取り見込額などの整理に対応します。税額や特例の適用可否は、税理士または税務署へ確認してください。
5|保有継続と売却を同じ期間で比較する
売却するかどうかは、次の二つを同じ期間と条件で比較します。
保有を続ける場合
- 今後1年・3年・5年の予想賃料
- 管理費・修繕積立金の改定
- 空室・原状回復・設備交換
- 固定資産税・保険料
- ローン返済額と残高
- 大規模修繕や一時金
- 期間終了時の想定売却価格
今売却する場合
- 現在の査定価格
- ローン完済に必要な金額
- 仲介手数料等の売却費用
- 税金の概算
- 売却後に残る資金
- 売却後の資金使途
保有継続の累積手残りがプラスでも、将来の大きな修繕や価格下落リスクを含めると売却が合理的な場合があります。反対に、現在の収支が赤字でも、改善余地や賃料上昇、ローン元本の減少などを考慮すると保有継続が合理的な場合もあります。
売却判断前に揃えたい資料
- 賃貸借契約書またはサブリース契約書
- 最新の賃料入金明細
- 管理費・修繕積立金の通知
- 固定資産税の納税通知書
- ローン返済予定表と残高証明
- 管理組合の総会議事録
- 長期修繕計画
- 購入時の売買契約書と費用資料
- 過去の修繕・設備交換履歴
- 現在の査定資料
まとめ|売却は、複数の選択肢を比較して決める
投資用マンションの売却時期は、利回り、築年数、市況の一つだけでは決まりません。
現在の手残り、改善できる費用、将来の修繕・空室リスク、売却手取り、税務、保有目的を並べ、保有継続、管理改善、修繕・再生、売却を比較する必要があります。
TESキャピタルでは、売却を前提とせず、不動産の契約、収支、管理状態、市場価格、物件状態、ローン残高を整理します。法律・税務・金融機関との交渉など専門判断が必要な場合は、弁護士、税理士、金融機関等への確認をご案内します。
参考:
国税庁「土地や建物を売ったとき」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/05_3.htm
国税庁「マイホームを売ったときの特例」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm
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関連プロフィール

橋本裕介
株式会社TESキャピタル代表取締役。投資用不動産オーナー向けに、売却・出口戦略、サブリース契約の見直し、管理改善、不動産に関する選択肢整理、資産形成に関する情報提供を行う。著書に『あなたをインフレ時代の勝者にする 投資初心者向け 日本の強みを活かした新・資産運用術』がある。
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