30代以降の人々であれば、以前は500円でランチを食べることはそう珍しいことではなく、被服や
出かけた際の出費に割高感を覚えることは多くはなかった、そんな記憶があるのではないでしょうか?
ところが2年くらい前から少しずつ、値上がりを体感する場面に遭遇していると思います。
500円で済ませられていたランチはたいていテイクアウトのみになり、スーパーの買い物も多くの品目で
値上げが起こっていたり、様々なところでものの値段が上がっています。かの有名なうまい棒ですら、
12円へと値上げすることになりました。今年に入ってからの値上げとなった品目数は1万点を超え、
平均で13%の値上がり率という調査結果も発表されています。
日本の経済成長は微増とはいえ認められていたものの、物価そのものは上がらないという状態が長期化
したことによって企業全体の売上は伸びなく、社員の給与に反映されないため消費者として国民は
買い物を控えるようになりました。すると企業はさらに値下げを実行し、物価はさらにさがっていく
いわゆるデフレスパイラルに陥っていました。
結果として90年代に入り国内経済は停滞を迎え、それからおよそ30年が経過しています。
日銀は政策として「年2%の物価上昇」を掲げて手を打ってきました。
その結果が奏功したかどうかは後述の通りですが、今年2022年に入り消費者物価の伸び率が突如2.1%を
記録しました。数字上ではインフレに転換しています。
※下図の通り
インフレのこれまでの定説は、物価上昇により企業の売上増加、従業員の給与が上がり、消費意欲が
上がるという循環が生まれるというものです。
しかし現状での物価上昇、つまりインフレへと転換した背景を考えなくてはなりません。
まず、物価上昇した原因として考えられるのは消費者の需要が増加したことに起因するのではなく、
コロナ禍だとかロシアとウクライナによる紛争などといった外的要因を発端としたエネルギー資源の
高騰と原材料価格の高騰です。
特に食品に関しては生産・製造を輸入に頼る割合が6割ほどと大きく、小麦を代表とするような
原料価格の高騰は即座に商品価格に反映されてしまいます。
本来的な意味合いでいえば、給与も同時に上昇していくのがインフレのあるべき姿です。事実、日本の
賃金は約30年以上に渡ってほぼ変わっていません。
最近のインフレは世界的に発生して各国に多大な影響を及ぼしており、アメリカでは8%も上昇している
状況です。そうした数値と比較すれば日本で起こるインフレはまだソフトなものであると捉えることも
できますが、世界では大きな問題となり始めています。
需要の増加による物価上昇という積極的要因ではないものの、企業がこのインフレに乗じて賃金上昇へ
転嫁できるかどうかが日本経済の長きに渡る低迷を脱却する分かれ道になると考えられます。
この30年ぶりに起こった状況は直近の日本社会、日本経済を左右する非常に大事な分岐点になり得るの
ではないでしょうか。
政府は賃金を増加させた企業に対し、一定の割合を補助(税額の優遇措置)することで賃上げを後押し
する政策を推し進めていることもあり、上手く乗り越えられる見込みもあります。一方で景気の停滞
基調が続く中で物価上昇だけが継続してしまうとスタグフレーションへの懸念も高まるため、個人で
策を講じておくことも必要になるでしょう。
具体的には副業を開始したり、投資での資産構築がお勧めです。急な情勢の変化にも対応できるよう、
常に準備をしておくことが賢明と言える時代なのでしょう。