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不動産コラム

住宅購入の予算はいくらが適正?「借りられる額」ではなく「返せる額」の決め方

住宅購入の予算はいくらが適正?「借りられる額」ではなく「返せる額」の決め方

住宅購入で最初に決めるべきなのは、気に入った物件の価格ではありません。

家計が壊れない毎月返済額です。

「住宅ローンはいくらまで借りられるか」「年収の何倍まで買えるか」だけで考えると、購入後に教育費、固定資産税、修繕費、金利上昇、収入変化が重なったときに家計が苦しくなる可能性があります。

本記事では、初めて住宅を購入する方に向けて、「借りられる額」ではなく「返せる額」から住宅購入予算を決める方法を整理します。

執筆:TESキャピタル編集部 | 監修:橋本裕介

結論から言います。

住宅購入の予算は、物件価格から決めるものではありません。

毎月の家計、自己資金、諸費用、購入後コスト、将来の支出を確認し、「無理なく返し続けられる金額」から逆算して決めるべきです。

審査に通る金額と、安心して暮らせる金額は違います。

住宅購入予算は「物件価格」ではなく「毎月の家計」から決める

住宅購入では、最初に物件価格を見てしまいがちです。

しかし、購入後の生活を左右するのは物件価格そのものではありません。毎月の住宅ローン返済、管理費、修繕積立金、固定資産税、保険料、修繕費を支払った後に、生活費と将来の貯蓄が残るかです。

住宅購入全体の確認項目は、初めての住宅購入ガイドの「買える金額と返せる金額の違い」でも整理しています。

予算を考える順番は、次のとおりです。

  1. 毎月の手取り収入を確認する
  2. 生活費、教育費、保険料、車関連費、通信費などの固定支出を確認する
  3. 毎月残したい貯蓄額を決める
  4. 住宅に使える月額上限を決める
  5. 住宅ローン以外の購入後コストを差し引く
  6. 残った金額から借入額を逆算する

先に物件価格を決め、その価格に合わせてローンを組むのは危険です。

家計から逆算して、その範囲に入る物件を探す方が安全です。

「借りられる額」と「返せる額」は違う

住宅ローンの審査では、年収、勤務先、勤続年数、雇用形態、既存借入、物件評価、信用情報などをもとに借入可能額が判断されます。

ただし、審査で認められる金額は、金融機関が融資できると判断した金額です。

その金額を借りても、家庭ごとの教育費、親の介護、転職予定、車の買い替え、老後資金、修繕費まで問題ない、という意味ではありません。

比較項目借りられる額返せる額
判断する人金融機関購入者本人・家計
主な基準年収、返済負担率、信用情報、物件評価手取り収入、生活費、将来支出、貯蓄、リスク許容度
見る期間審査時点を中心に判断返済期間全体で判断
含まれにくいもの教育費、介護、家族構成の変化、修繕費の増加生活に必要な支出を含めて考える
注意点審査に通っても安全とは限らない借入額が小さくなっても生活は守りやすい

住宅購入で大切なのは、最大借入額を知ることではありません。

借りた後も生活を維持できる金額を把握することです。

返済負担率は目安になるが、上限まで借りてよいという意味ではない

住宅ローンでは「返済負担率」という考え方があります。

返済負担率とは、年収に占める年間返済額の割合です。

住宅金融支援機構の【フラット35】では、年収に占めるすべての借入れの年間合計返済額の割合を「総返済負担率」とし、年収400万円未満は30%以下、年収400万円以上は35%以下という基準を示しています。

出典:住宅金融支援機構「フラット35 よくある質問:年収による借入額などの制限はありますか。」

ここで注意すべき点は2つあります。

1つ目は、この基準は審査上の基準であり、家計上の安全ラインとは限らないことです。

2つ目は、「すべての借入れ」が対象になることです。住宅ローンだけでなく、自動車ローン、教育ローン、カードローン、分割払い、リボ払いなども考慮されます。

たとえば、年収600万円で返済負担率35%まで借りられるとしても、年間返済額は210万円、月額では17.5万円です。

この金額に加えて、固定資産税、管理費、修繕積立金、火災保険、車、教育費、老後資金を払っても家計が回るかは、家庭によって大きく異なります。

「審査基準に入っているから大丈夫」と考えてはいけません。

年収別に見る返済額の考え方

次の表は、額面年収に対して住宅ローン返済額だけを20%・25%で見た場合の単純計算です。

額面年収年収20%の返済額月額換算年収25%の返済額月額換算
400万円80万円約6.7万円100万円約8.3万円
500万円100万円約8.3万円125万円約10.4万円
600万円120万円約10.0万円150万円約12.5万円
700万円140万円約11.7万円175万円約14.6万円
800万円160万円約13.3万円200万円約16.7万円
1,000万円200万円約16.7万円250万円約20.8万円

この表は、購入可能額を決めるための答えではありません。

あくまで、返済額の大きさを把握するための入口です。

同じ年収600万円でも、子どもがいる家庭、車を持つ家庭、共働きの継続が不確実な家庭、親の介護を見込む家庭では、安全な返済額が変わります。

また、マンションでは管理費・修繕積立金・駐車場代がかかります。戸建でも将来の外壁、防水、設備交換などの修繕費を自分で積み立てる必要があります。

住宅ローン返済だけを見て、住宅費全体を判断してはいけません。

毎月の住宅費上限を決める

住宅購入予算は、次の式で考えると整理しやすくなります。

項目考え方
毎月の手取り収入税金・社会保険料を差し引いた実際の入金額
生活費食費、光熱費、通信費、保険料、教育費、車、医療費など
毎月残す貯蓄教育費、老後資金、予備費、車の買い替え、旅行等
住宅に使える月額上限手取り収入から生活費と貯蓄を引いた金額
住宅ローン以外の住宅費管理費、修繕積立金、固定資産税、保険、駐車場、修繕費など
住宅ローン返済に使える額住宅に使える月額上限から、ローン以外の住宅費を差し引いた金額

たとえば、住宅に使える月額上限が15万円でも、マンションの管理費・修繕積立金・駐車場代で月4万円かかるなら、住宅ローン返済に使えるのは11万円です。

固定資産税や火災保険を年払いする場合も、月額換算して家計に入れてください。

毎月の住宅ローン返済だけを見て「払えそう」と判断すると、購入後に年払い費用や修繕費で苦しくなります。

借入額は月々の返済可能額から逆算する

毎月返済できる金額が決まったら、そこから借入額を逆算します。

次の表は、返済期間35年、元利均等返済、ボーナス返済なしで試算した概算です。実際の借入条件、金利、団体信用生命保険、手数料、審査結果によって変わります。

毎月返済額金利1.0%の場合金利1.5%の場合金利2.0%の場合金利2.5%の場合
8万円約2,830万円約2,610万円約2,420万円約2,240万円
10万円約3,540万円約3,270万円約3,020万円約2,800万円
12万円約4,250万円約3,920万円約3,620万円約3,360万円
15万円約5,310万円約4,900万円約4,530万円約4,200万円

同じ毎月返済額でも、金利が上がると借りられる元本は小さくなります。

反対に、低い金利だけを前提に借入額を大きくすると、金利上昇時に家計の余白がなくなります。

住宅金融支援機構も、住宅ローンの金利タイプには変動金利型と全期間固定金利型があり、変動金利型は返済途中で適用金利が変動する一方、全期間固定金利型は借入時に返済終了までの適用金利が確定すると説明しています。また、返済途中で金利が上昇した場合に、月々の返済額が増えても家計を圧迫しないかをあらかじめ確認する重要性を示しています。

出典:住宅金融支援機構「“金利のある世界”でどう変わる?これからの住宅ローン選びを考えよう」

金利タイプを選ぶ前に、まず金利が上がっても耐えられる借入額かを見てください。

自己資金は「頭金」と「残すお金」に分ける

自己資金をすべて頭金に入れれば、借入額は減ります。

しかし、手元資金を使い切るのは危険です。

住宅購入では、頭金以外にも次の支出があります。

支出項目主な内容
購入時の諸費用登記費用、ローン関連費用、印紙税、仲介手数料、固定資産税等の精算金など
引越し・家具家電引越し費用、カーテン、照明、エアコン、家具、家電など
保険火災保険、地震保険など
入居後の修繕・調整リフォーム、設備交換、外構、鍵交換、インターネット工事など
生活防衛資金収入減少、病気、転職、出産、介護、急な支出への備え

頭金を多く入れること自体は悪くありません。

問題は、頭金を入れた結果、手元に何も残らないことです。

購入直後は、想定外の支出が出やすい時期です。家電が壊れる、引越し費用が増える、修繕が必要になる、税金の支払いが来ることがあります。

自己資金は、「使うお金」と「残すお金」に分けて考えてください。

予算オーバーになりやすい費用

住宅購入で予算オーバーになりやすいのは、物件価格そのものより、周辺費用です。

特に注意したいのは次の項目です。

1|諸費用

物件価格だけで資金計画を作ると、登記費用、ローン手数料、保証料、印紙税、仲介手数料、火災保険料、固定資産税等の精算金が抜け落ちます。

諸費用を住宅ローンに含められる場合もありますが、その分だけ借入額が増え、毎月返済額も増えます。

2|管理費・修繕積立金

マンションでは、住宅ローン以外に管理費と修繕積立金が毎月発生します。

現在の金額だけでなく、将来の値上げ予定も確認してください。中古マンションでは、長期修繕計画、総会議事録、修繕積立金の残高まで確認する必要があります。

3|固定資産税・都市計画税

固定資産税や都市計画税は、毎月ではなく年単位で支払うことが多い費用です。

月々のローン返済が払えても、年払いの税金を忘れていると家計が崩れます。年間額を12で割り、毎月の住宅費に含めて考えます。

4|火災保険・地震保険

保険料は、建物の構造、所在地、補償内容、契約期間によって変わります。

住宅ローン審査時の返済額だけでなく、保険料も購入後コストとして見込んでください。

5|戸建の修繕費

戸建では、マンションのように修繕積立金が毎月請求されるとは限りません。

しかし、外壁、屋根、防水、給湯器、配管、設備交換などの修繕費は将来発生します。

請求が来ないだけで、費用が不要になるわけではありません。自分で積み立てる必要があります。

6|家具・家電・外構・リフォーム

新居に合わせて家具や家電を買い替えると、想定以上の支出になります。

中古住宅では、引渡し後にリフォームや設備交換が必要になることもあります。購入前に、どこまでを初期費用に入れるか決めておくべきです。

予算を決めるときの危険な考え方

次の考え方に当てはまる場合は、購入申込みを急がず、資金計画を見直してください。

1|「審査に通るなら大丈夫」と考えている

審査は、返済可能性を金融機関が判断するものです。

あなたの生活の満足度や、教育費、介護、老後資金まで保証するものではありません。

2|ボーナス返済を前提にしている

ボーナスは、勤務先の業績や雇用環境で変わる可能性があります。

ボーナス返済を組む場合でも、ボーナスが減っても家計が破綻しないかを確認してください。

3|変動金利の低い返済額だけで判断している

変動金利は、借入時点の返済額を抑えやすい一方、返済途中で金利が上がるリスクがあります。

「今の返済額なら払える」では不十分です。

金利が上がった場合の返済額も確認してください。

4|ペアローン・収入合算を最大まで使っている

共働き収入を前提に借入額を大きくすると、出産、育休、病気、転職、介護などで一方の収入が減ったときに返済が重くなります。

ペアローンや収入合算を使う場合は、片方の収入が一時的に下がっても対応できるかを確認してください。

5|手元資金をすべて頭金に入れている

頭金を入れて借入額を減らすことは有効です。

しかし、生活防衛資金まで使ってしまうと、購入後の予期しない支出に対応できません。

6|「家賃並みで買える」という言葉だけで判断している

家賃と住宅ローン返済額は同じではありません。

持ち家では、固定資産税、修繕費、保険料、管理費、設備交換費が発生します。家賃と同額のローン返済でも、住宅費全体は家賃より重くなることがあります。

住宅購入予算を決める実務ステップ

住宅購入予算は、次の順番で決めると整理しやすくなります。

1|現在の家計を数字で出す

手取り収入、生活費、保険料、教育費、車関連費、通信費、サブスク、既存借入、毎月の貯蓄額を確認します。

感覚ではなく、通帳、カード明細、家計簿アプリなどで実額を見てください。

2|購入後も残したい貯蓄額を決める

住宅を買うと、家計の自由度は下がります。

教育費、老後資金、車の買い替え、親の介護、転職リスクなどを踏まえ、毎月いくら貯蓄を続けたいかを先に決めます。

3|住宅に使える月額上限を決める

手取り収入から、生活費と貯蓄を差し引き、住宅に使える月額上限を出します。

この金額は、住宅ローン返済だけではありません。管理費、修繕積立金、税金、保険、修繕費も含めます。

4|購入後コストを月額換算する

固定資産税、火災保険、地震保険、戸建修繕費、マンションの管理費・修繕積立金、駐車場代を月額換算します。

年払い費用も12で割って、毎月の家計に反映してください。

5|住宅ローン返済額の上限を決める

住宅に使える月額上限から、購入後コストを差し引きます。

残った金額が、住宅ローン返済に回せる上限です。

6|金利別に借入額を試算する

1つの金利だけで試算しないでください。

変動金利、固定金利、金利上昇時の返済額を比較し、金利が上がっても家計が耐えられるかを確認します。

7|自己資金の配分を決める

自己資金を、頭金、諸費用、引越し・家具家電、リフォーム、生活防衛資金に分けます。

余ったら頭金に入れるのではなく、残すべき資金を先に確保してください。

8|物件価格の上限を決める

最後に、借入額と自己資金から物件価格の上限を出します。

この順番を守れば、物件に合わせて無理なローンを組むリスクを下げられます。

資金計画は、物件探しの前に作るべきです。

予算は一度決めたら終わりではない

住宅購入予算は、物件探しの途中で変わります。

金利、管理費、修繕積立金、固定資産税、リフォーム費用、火災保険料、住宅ローンの審査条件によって、実際に買える価格は変わります。

そのため、気になる物件が出るたびに次の点を確認してください。

  1. 毎月返済額はいくらか
  2. 金利が上がった場合の返済額はいくらか
  3. 管理費・修繕積立金はいくらか
  4. 固定資産税・都市計画税はいくらか
  5. 修繕費やリフォーム費用は必要か
  6. 諸費用を含めた総額はいくらか
  7. 購入後に手元資金はいくら残るか
  8. 収入が一時的に下がっても返済できるか

物件価格が予算内でも、購入後コストが高ければ家計は苦しくなります。

反対に、物件価格が少し高くても、管理費や修繕リスクが低く、長く住みやすい物件なら総合的に検討できる場合もあります。

価格だけでなく、保有する期間全体の負担で判断してください。

まとめ|住宅購入予算は「返し続けられるか」で決める

住宅購入で失敗しやすいのは、買う瞬間だけを見てしまうことです。

大切なのは、買った後も生活が続くことです。

住宅ローンの審査に通るか。頭金をいくら入れるか。物件価格がいくらか。

これらは重要ですが、それだけでは足りません。

本当に確認すべきなのは、住宅ローン、税金、保険、管理費、修繕費を払った後も、教育費、老後資金、生活防衛資金を確保できるかです。

借りられる額を上限にしない。

返せる額から物件価格を逆算する。

この順番を守ることが、初めての住宅購入で家計を守る基本です。

物件を探す前に、住宅購入の判断軸を整理する

住宅購入では、予算だけでなく、住宅ローン、諸費用、物件種別、立地、災害リスク、契約条件、購入後の暮らしまで確認する必要があります。

TESキャピタルでは、初めて住宅を購入する方が確認すべき8項目を、初めての住宅購入ガイドにまとめています。買える金額と返せる金額の違いは、ガイドの予算の章でも整理しています。

また、資金計画から物件選び、契約前確認までを整理したデジタル本「住宅大全」を無料で提供しています。

監修者プロフィール

監修者:橋本裕介
株式会社TESキャピタル代表取締役CEO。宅地建物取引士。金融・経済の視点から、不動産市場分析、投資用不動産の売却・出口戦略、サブリース契約の見直し、国内外の不動産市場に関する情報発信を行っている。

※株式会社TESキャピタルは、金融商品の販売・勧誘、個別銘柄等に関する投資助言、保険商品の募集・勧誘、法律・税務の個別判断は行っておりません。本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、住宅ローンの審査結果、適用金利、借入条件、税制、補助制度、購入可否は個別事情によって異なります。個別判断については、必要に応じて金融機関、宅地建物取引士、税理士、ファイナンシャルプランナー等の専門家へご確認ください。