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望まれるNISAの恒久化と現状

望まれるNISAの恒久化と現状

今年5月、岸田首相は改めて「貯蓄から投資へ」を推し進めるべく「資産所得倍増プラン」を打ち出しました。日銀が2020年に

公開したデータによれば家計金融資産のうち、日本は預貯金が54.2%・株式等が9.6%・投資信託が3.4%と非常に

偏っています。日本の個人資産は約2000兆円あり、うち現金の預貯金は1000兆円とも言われている中、他国と比較しても

著しく低く大きな差があるのが実情です。この資産所得倍増プランの中では「家計の預金が投資にも向かい、持続的な

企業価値向上の恩恵が家計に及ぶ好循環を作る必要がある」としており、優遇制度等の一層の拡充を推し進める上で

前述の調査結果も大きく影響しているでしょう。

<NISA(少額投資非課税制度)とは、個人投資家向けの少額投資非課税制度>

2014年に開始しましたが様々な変更点を経た現行制度では、
一般NISA→株式・投資信託等を年間120万円まで購入でき、最大5年間非課税で保有できます。
つみたてNISA→一定の投資信託を年間40万円まで購入でき、最大20年間非課税で保有できるという内容です。
※ジュニアNISAについてはこの章では割愛します。

まずは改正が決まり2024年から施行される新NISAの内容について説明します。

目次

一般NISA


一般NISAはNISA口座で株式等に投資した場合、売却益や配当金への税金(通常は20%発生)が最長で

5年非課税になる制度ですが、口座開設可能期間が5年延長され、2028年(令和10年)まで有効となります。2028年内に

口座を開設して投資をスタートすれば非課税期間を5年しっかり確保できるということです。

また、投資の上限額は120万円から122万円に改正されますが現行と内容が異なり、2階建ての構造となります。

2階建てとは、1階部分がつみたてNISA風で2階部分が一般NISAのようなモデルのことです。

詳しく解説しますと

・1階部分は安定的資産形成を目的として設置されており「積立・分散投資に適した一定の公募株式投資信託等が投資対象」

つまり現行のつみたてNISAと同様です。(非課税枠年間20万円)

・2階部分は成長資金の供給拡大を目的に設定されており「上場株式・公募株式投資信託等が投資対象」つまり現行の

一般NISAと同じ考え方です。(非課税枠年間102万円)

※この2階部分の非課税枠を利用するには1階部分の積み立て投資が原則として必須です。

つみたてNISA

口座開設可能期間が現行だと2037年までだったのが2042年までと延長されました。これにより2042年内につみたてNISAを

開始すれば、その後20年間非課税期間を享受できるようになります。

さて、不景気の煽りを受けた収入減や老後2000万円問題やが取りざたされてから脚光を浴び始めたNISAですが、

そのメリットについて改めておさらいしておきましょう。

つみたてNISAのメリット

・積み立てて購入した投資信託の売却益、配当金を受け取ると通常だと税率で20.315%が課税になりますが

非課税で受け取り可能
・前述の通り非課税枠は年間40万円、1か月あたり約33,000円の積み立てで投資可能
・非課税投資期間は最長20年
・金融庁が規定した条件を満たす投資信託に限定されており、積み立て投資に適した投資商品のみが対象

冒頭に書いた「資産所得倍増プラン」ですが、一言でいえば各世帯の金融資産を投資に振り向けたい意向がその背景には

あります。当然、さらなるメリットをぶら下げないと今以上の「貯蓄から投資へ」というムーブメントを大きくすることは

難しいでしょう。

これを受けて金融庁が2023年税制改正要望書に盛り込んだと話題になっているのが、

・NISAの恒久化
・非課税上限枠の拡大
・非課税期間の無期限化


これらを求めるという内容でした。今回の要望書は金融庁から財務省への要望のあとに税制調査会を通り、税制改正大綱

として政府や与党での議論ののち結論を迎えるのは年末の見込みです。

現在では一般NISAとつみたてNISA合わせ2000を超える銘柄が存在する中、適当な投資先を初心者が自力で見つけることは

厳しいでしょうし、ロールオーバー(非課税期間が終了した際に保有している金融商品を、翌年の新たな非課税投資枠に

移すこと)の仕組みなども知らなくてはなりません。

いずれにしても未開設で素人である一国民に対し投資に目を向けるよう促すには、更なる簡素化や意欲はあるものの

「そもそもの知識がない層」に対するサポート体制も今後は大きく求められるのではないでしょうか。課題を抱えた

ままのNISAに関するこのニュースが今年の年末に一体どのように進むのか、要注目です。

橋本裕介