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変わるものと変わらないもの
つい半年前、いや3か月前は、誰が、このような事態になることを想像したでしょうか。
飲食店は営業自粛を余儀なくされ、デパートやスポーツジム、映画館も閉まり、飛行機や新幹線をはじめとする交通機関は乗車率が激減。銀座の表通りでさえ人影がまばらで、今まで見たことのないような光景となっています。
“ステイホーム”の合言葉とともに、外出を控えて家で過ごすという生活が続いているなかで、これからどう生きていくか、どのように仕事をしていくか、誰もがかつて経験しなかった局面にぶつかっているといっていいでしょう。
世界各国が鎖国状態となり、まるで日本経済が止まってしまったような今。わたしたちは〈ウィズコロナ〉の最中にいますが、この一日一日を大切に暮らしながら、〈アフターコロナ〉の未来に思いを巡らせたいものです。
これからの社会や生活に何が求められているのか、筆者なりの実感をお伝えしてみることにしました。
オンラインの活用が急激に浸透
世界史に大きく刻まれるであろう、2020年、新型コロナウイルスの感染拡大は、大きく時代を変えるといわれています。ニューノーマル、ニュースタンダードと、あらゆることが新しい価値観で塗り替えられ、わたしたちもその覚悟が必要になってきました。
ただ、新しく変わるといっても、すべてが想定外の方向に大転換するわけではなく、既にその兆しが2000年以降芽生え、近年、脈々と進められてきたことが、このパンデミックが契機となって、明確な方向が示されたといえるのではないでしょうか。
身近なところで働き方からいうと、ITをベースにした在宅勤務(リモートワーク、テレワーク)がその顕著な例です。
朝夕の満員電車に揺られ、わざわざ長時間かけて会社に通勤しなくても、自宅にインターネットでつながったコンピュータ端末さえあれば、自宅で快適に仕事ができるし、海に近い郊外や、都心から遠く離れた山奥に住むという選択肢も出てきます。
仕事に欠かせない会議や打ち合わせに関しても、最近はオンラインで行うことがすっかり浸透してきました。
私自身は長年、フリーランスで仕事をしているので、自宅で仕事をするということには何の違和感もありませんが、ただ今のように、あらゆるイベントが自粛され、人と会うことが難しくなっていると、情報源そのものが欠乏して、活動がしづらくなっているのが現状です。
さらに、学校の授業やビジネスセミナー、映画やコンサートと、まさに教育からエンターテイメントに至るまで、急激にオンライン化が進み、動画のネット配信が活用されています。
飲み会までオンラインというのは、これは個人の好みの問題ですが、それも居酒屋でワイワイやるのとは別の楽しさがあるのかもしれません。
リアルとデジタルの使い分けが進む
考えてみると、映画は(特にアナログ好きの私にとっては)映画館に行くことがベストだし、ライブやコンサート、芝居や美術展にしろ、実際にその場に足を運んで世界を共有する方がいいですよね。飲み会だって居酒屋で集まった方が楽しいに決まっている。それでもオンラインには、自分の好きな時間にじっくり観ることができるといった別のメリットがあるのです。
買い物についても、ネット(イーコマース)は本当に便利で、私も日常品の重い物などに限らず、ファッション関連もかなり以前からネットショッピングを利用しています。ショッピングサイトの精度やサービスも向上しているので、ほとんど失敗もありません。
ただ、ネットショッピングが浸透すればするほど、リアル店舗での買いものが恋しくなっているのも事実。リアル店舗には予想もしなかったものとの出会いや発見があります。店の人との交流も楽しいものです。レストランやファッションの魅力というのは、その店やブランドをつくる人、つまりシェフや店のオーナー、デザイナーや販売員といった、人の魅力が占める割合も少なくないのではないでしょうか。
今のような事態では、デパートやファッションビルを歩き回ったり、ましてやパリの街で美しいものに触れたりということはかないませんが、いつの日がまたそういう楽しみができるのを心待ちにしているのです。
つまり、デジタル化が進めば進むほど、もともとのリアルなものの魅力が見直されるのではないでしょうか。
買い物や娯楽に限らず、仕事においても、人と直接会って話すことの大切さが実感されるはずです。
ただ、リアルとオンライン(インターネット)いう両方のバランスは確実に変わります。これからはオンラインが主流になっていくかもしれませんが、一方では人が媒介となるリアル店舗、人と人とが対面して行う会議や打ち合わせも決して消滅することはなく、比重が減るだけにそのコミュニケーションの大切さも実感され、質も高められるものと思われます。
変わるものと変わらないもの、便利なものと不便でも感動があるもの、私たちはその両方が必要だし、両方をうまく使い分けていくようになると思うのです。
【おすすめビジネス書】
入山章栄著 『世界標準の経営理論』 (ダイヤモンド社)
832ページ(21 x 15 x 5.6 cm) 定価2900円+税
毎回、1冊のビジネス書を紹介していきます。しかも多くの人が紹介していらっしゃるような古典といえる必読書やベストセラーというより、最近の新しい傾向が見えるものを積極的に取り上げたいと思います。
書籍の分野もデジタル化が進み、電子書籍が単行本とほぼ同時に発売されるようなものもありますが、やはり従来の紙の書籍はすたれることはありません。
むしろこのコロナ禍の巣ごもり消費で、多くの人が読書や本の魅力を見直したといえるのではないでしょうか。
最近のビジネス書は装丁デザインもグッと洗練され、図解イラストで解説したものなど、ふと手に取りたくなるようなビジュアルの美しいものも増えています。
そういう中で、この『世界標準の経営理論』は異色な存在ですが、想像以上の反響を見せています。
とにかく大きく、重い。今や、軽くて読みやすい本がビジネス書の主流を占めるなかで、これは決して鞄に入れて持ち歩くのに適しているとは言えません。つまり、家で読むのに最適なのです。
白を基調にしたシンプルな装丁で、『広辞苑』にも近いかなりの存在感があります。
内容は、世界の主要な経営理論30が網羅されており、辞書のようにどの章からでも読めるようになっています。読みやすい横書きです。
ビジネスパーソンの「思考の軸」となるように、わかりやすく解説することを目指したという同書。これからの仕事や働き方をじっくり考えるこの時期に、特に経営学を学びたい方へお勧めしたい1冊です。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
次回以降も新型コロナウィルス後のライフスタイルをテーマに連載をさせていただきます。
今回は以上となります。 最後までお読みいただきありがとうございました。