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2025年4月 首都直下地震発生時の不動産市場への影響分析②

2025年4月 首都直下地震発生時の不動産市場への影響分析②

中期的影響(発生1~5年)

・住宅市場の中期的変化

復興需要と価格の底打ち:

発生から1~2年を経過すると、本格的な復興・再建が始まり、住宅市場も底打ちの段階に入ります。壊れた住宅の建て替え需要や、政府・自治体による被災者支援策(住宅再建補助金、災害公営住宅の建設など)により、住宅取引件数も徐々に回復します。被災直後に急落した地域でも、1~3年後には緩やかな価格持ち直しが見込まれます。阪神・淡路大震災の例では、震災後2年ほどは下落が続いたものの、その後は復興事業の進展とともに地価の下落幅が縮小し、やがて安定傾向に転じています。首都直下地震でも、おおむね2~3年以内に不動産市場は安定化し始め、最悪期を脱すると予想されます。

ただし完全回復には時間:

中期的(5年程度)には被災前水準に近づく地域もある一方、完全には戻らない地域も多いでしょう。被害の甚大だった地域では人口減少やリスク懸念が尾を引き、住宅価格が震災前を依然下回る可能性があります。阪神大震災では、被災地では震災前の地価水準に達しないまま長期低迷したケースが指摘されています。首都直下地震でも、火災で町ごと焼失したような地区では復興町づくり(区画整理や防火帯の整備)が完了するまでに時間を要し、その間は土地利用価値の低下が続く可能性があります。とりわけ、液状化リスクが顕在化した埋立住宅地などは敬遠され、地盤改良や耐震補強など安全対策が講じられない限り、以前ほどの需要が戻らないかもしれません。実際、2011年の東日本大震災では直接被害のなかった東京でも、軟弱地盤エリアの住宅地価格が約5年間にわたり3%程度低下し続け、ようやく元の水準に回復するといった長期的影響が観察されています。被災直後に高まった安全志向は中期的にも残り、買い手は「次も安心な地域・構造か」を以前より厳しく吟味するため、地域間・物件間で明暗が分かれます 。耐震・防災性能の高い新築住宅や高台の物件には人気が集中し、値崩れしにくい一方、旧耐震の古家が多い地域やハザードエリアでは価格回復力が鈍くなります。住宅市場では震災を契機に「安全の価値」が再評価され、リスクの高い不動産は中期的にも割安な状態が続くと考えられます (地震災害リスクと都内住宅価格の関係|住まい1プラス|三菱UFJ不動産販売「住まい1」)。

人口移動・需給バランス:

中期スパンでは人口動態の変化も市場に影響します。震災により一時的に都心から転出した人々のうち、復旧とともに戻ってくる層もいますが、依然として「首都直下型地震を経験した東京は怖い」と感じて他地域に定住する人も出るでしょう。特に子育て世代などは安全を求めて地方転出を選ぶケースも考えられ、首都圏全体で見ると人口流入ペースの鈍化や一部転出超過が起こる可能性があります。一方で、復興需要に伴う労働力流入や都市再生プロジェクトによって新たな住民が増える面もあり、人口動態の影響は地域ごとに異なります。総じて、都心部・被災エリアの人口は震災前より減少傾向、周辺の安全な地域は微増傾向となり、それに応じて住宅需給も変化します。この傾向は価格にも反映され、都心被災エリアでは需要不足で価格が伸び悩み、周辺安全エリアでは需要超過で高値安定となるでしょう。ただし5年も経てば、防災インフラの強化や地域再生の進展で「もう一度都心に住みたい」という動きも出てきて、長期的には人口減少傾向も収束に向かうと期待されます。

政策の影響:

中期的には政府や自治体の政策対応も市場を左右します。被災者への住宅再建支援金、税制優遇、低利融資などにより、新築建設や中古住宅購入が促進されれば、住宅市場の回復も早まります。また、防災都市計画に基づき被災地で大規模な土地区画整理や防火帯道路の新設が行われると、街並みが刷新され不動産価値が向上する可能性もあります。一方で、再建に際して建築制限(防災上危険なエリアでの再建禁止など)が課されれば、該当地域の土地は事実上の資産価値ゼロになる恐れもあります。例えば津波被災地では防災集団移転で沿岸部の宅地が公的買い上げとなり市場から消えましたが、首都圏でも河川沿い低地などで類似の措置が取られれば、そうした地域の地価は中期的にも回復せず半永久的に低迷するでしょう。これら政策要因により、中期的な地域間の不動産価格格差は一層鮮明になる可能性があります。

中期(1~5年)の住宅市場を地域別に見ると、以下のような傾向が予想されます。

地域別の中期傾向(住宅):

  • 東京23区(被災エリア): 都心部では復旧が最優先され2~3年以内にインフラ・建物の復興が進むため、価格も次第に持ち直します。都心のマンション市場などは震災前に迫る水準まで回復する可能性があります。ただし、下町など被害の大きかった地区では5年経っても震災前を下回る水準に留まるでしょう。全壊地域では新しい街づくりが完了するまで人口も戻り切らず、資産価値の本格回復は長期戦になります。
  • 湾岸エリア: 液状化被害地では、安全対策の実施が価格回復の鍵となります。もし地盤改良やインフラ強化が行われ、住民の安心感が得られれば徐々に価格も回復に向かいます。しかし、リスクの記憶が薄れない5年程度の間は、震災前の高値水準に戻るのは難しく、震災前比で低い水準が続く可能性が高いです。
  • 埼玉県・多摩地域: 比較的安全だった郊外住宅地では、震災後に増えた人口が定着すれば底堅い需要が持続します。東京通勤者の一部が郊外定住に切り替わる動きもあり、住宅価格は緩やかに上昇基調を辿るか、高止まりするでしょう。仮に都心部が復興しても安全志向から郊外人気は続くため、震災前より高めの水準が維持される地域もありえます。
  • 神奈川県沿岸部: 横浜・川崎なども被災エリアの復興次第です。みなとみらい21など再開発地区は優先的に再建され、5年後にはほぼ震災前の活気を取り戻す可能性があります。一方、古い木造住宅が多かった地区では、高齢住民の転出や人口減が続き、住宅需要が萎縮して価格低迷が続く懸念があります。
  • 千葉県湾岸部: 防災集団移転や宅地造成のやり直しが進めば、新たな街として長期再生が図られますが、中期的にはまだ途上段階でしょう。宅地の利用制限や企業の撤退もあり、5年後でも震災前より低価格のままの土地が多く残ると見られます。逆に内陸部の安全な住宅地は震災を契機に人口が微増し、安定した価格推移が続くでしょう。

商業施設市場の中期的変化

都心オフィス・商業地の復興:

発災から数年経てば、東京の中枢機能は徐々に復活し、企業も都心回帰を進めます。壊れたオフィスビルの多くは建て替え・復旧が始まり、仮移転していた本社機能も東京に戻ってくるでしょう。5年も経てば丸の内・新宿など主要ビジネス街では新築ビルの供給も再開し、オフィス空室率は再び低下に向かうと期待されます。震災直後に下落した都心商業地の地価も、復興需要や国内景気の下支えで回復基調に転じ、中期的には上昇に転ずる地点も出てくると予想されます ()。とくに耐震性能が高く安心感のある新築ビルや再開発プロジェクトはテナント需要が強く、震災前以上の賃料水準を実現する可能性もあります。一方で、震災に乗じて経営破綻・撤退した企業や店舗も少なくなく、都心でも一部空きテナントが残る区域はあるでしょう。震災前から空洞化が指摘されていたエリアでは、一旦離れたテナントが戻らず、そのまま業態転換(例えばオフィス街→住宅街)するケースも考えられます。総じて都心部では**「新陳代謝を経て徐々に地価・賃料が持ち直す」**局面となりそうです。

郊外・ローカル商業の展開:

郊外や地方に一時移った商業需要は、首都圏復旧とともに元の立地に回帰していきます。震災後に一時的な賑わいを見せた郊外型店舗も、5年後には平常な需給に戻り、売上増効果は薄れるでしょう。従って、それらの不動産価格も中期的にはピークから調整局面を迎えるとみられます。ただし郊外でも新興住宅地として発展が続く地域では人口増に伴い商業ニーズが拡大し、商業地価が緩やかに上昇を続ける可能性があります。一方、被災した下町商店街などは復興商店街のオープンなどにより徐々に人出が戻り始めますが、かつての賑わいを取り戻すには時間がかかります。5年以内に復興が完了すれば地元商業も復活しますが、復興の遅れれば空白地帯のままとなり、商業地価も低迷を続けるでしょう。

投資・開発の再始動:

中期には国内外の不動産投資マネーも東京市場に戻ってきます。震災直後は敬遠された東京の不動産も、復興が進み将来の成長期待が高まれば再び魅力ある投資先となります。低迷していた不動産取引件数も平年並みに回復し、場合によっては復興特需による活況さえ見られるかもしれません。実際、2013年前後には震災後停滞していた不動産市場に海外マネーが流入し、東京の不動産価格が上昇基調に転じた経緯があります(当時は金融緩和策も寄与 )。同様に、首都直下地震後も5年以内には投資家の心理は正常化し、新規開発プロジェクトも次々と始動すると期待できます。再開発によって生まれ変わったエリアでは、震災前より高い付加価値が生まれ、不動産価格が震災前を上回るケースも出てくるでしょう。一方、再開発から取り残されたエリアとの格差は広がり、「勝ち組」と「取り残され組」で商業地の明暗が分かれる可能性があります。

中期的な商業不動産市場の地域差を整理します。

地域別の中期傾向(商業):

  • 東京都心ビジネス街: 大企業の復帰と再開発により、オフィス需要は回復。グレードAビルを中心に賃料・価格は上昇軌道に乗ります。ただ古いビルの中には取り壊し撤去され更地のままの所も残るため、都心でもエリアによって回復度合いに差が出ます。総じて5年後には主要ビジネス街の地価は震災前水準に近づくでしょう。
  • 繁華街・商店街: 再建された商業施設により徐々に人通りも戻り、売上・賃料は持ち直します。ただ、大型再開発で競合環境が変わったり、消費者の流れが変化した場合、かつての繁華街でも集客力が劣るエリアは取り残される恐れがあります。中期的には「集客力の高い再開発エリア→地価上昇、旧来型の商店街→伸び悩み」という構図が見られるかもしれません。
  • 湾岸工業・物流地帯: インフラ復旧に伴い工場・物流拠点が操業再開すれば、工業地の地価も徐々に回復します。ただし被災を契機に工場移転(海外移転含む)して戻らない企業もあり、一部用地は恒久的に需要減となる可能性があります。5年後でも空き地が目立つ工業団地では地価は低位安定のままかもしれません。
  • 郊外商業エリア: 一時的に繁盛した郊外店舗も震災特需の反動で売上が平常化し、不動産価値も安定推移に戻ります。人口増が続く新興郊外では緩やかな地価上昇が見込まれますが、大半の地域では震災前と同程度か微増程度で落ち着くでしょう。逆に都心復興により郊外から客足が引いたエリアでは、わずかながら地価下落する可能性もあります。

地域別の価格動向まとめ(短期~中期)

最後に、首都圏主要エリアにおける住宅・商業用不動産価格の短期・中期の変化傾向を表にまとめます。被害の程度や復興スピードに応じて、地域ごとに明確な違いが現れる点に注意が必要です。

おわりに

首都直下型地震が発生した場合、首都圏の不動産市場は短期的に未曾有の混乱と急変動に見舞われ、中期的にもその傷痕を残すと予想されます。住宅市場では被災エリアを中心に価格が急落し、取引が停滞する一方、安全性の高い地域への需要シフトが生じました。商業用不動産も経済活動の停滞によって大幅な価値減少が避けられず、中枢機能を担う都心部でさえ一時的に空洞化する可能性があります。しかしながら、過去の大震災の事例が示すように、人々はやがて生活と経済活動を再建していきます。時間の経過とともに市場は安定を取り戻し、復興需要や再開発によって新たな成長機会も生まれます。首都直下地震後の不動産価格は地域・用途によって「乱高下から回復への軌跡」が異なりますが、最終的には防災力を高めた都市づくりの下で、新たな均衡点に落ち着いていくでしょう 。被害を最小限に食い止め迅速な復興を遂げることが、経済的損失を抑え不動産価値を早期に回復させる鍵となります。災害リスクを織り込んだ資産選択が今後一層重要になる中、首都圏の不動産市場は「安全・安心」という新たな価値基準の下で再編されていくと考えられます。

【参考文献・情報源】

中央防災会議最終報告、国土交通省「大規模災害時の土地取引監視マニュアル」、阪神・淡路大震災に関する研究論文、東日本大震災時の市場動向レポー、不動産経済研究所・三菱UFJ不動産販売調査資料、Waseda University震災影響分析など。

これら信頼性の高いデータと事例を踏まえ、本分析では可能な限り現実的な不動産価格変動シナリオを描出しました。各地域の被害想定と復興力を見極めつつ、リスク分散と備えを講じることが不可欠であると言えます。

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橋本裕介
代表取締役
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