個人資産が10億ドルと、途方もない資産をもつ「ビリオネア」。2020年の長者番付ではAmazon創業者のジェフ・ぺゾス、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツに続き、2000人以上がビリオネアレベルの資産を保有していると発表されました。そんな彼彼女らがビリオネアに至ったルートは、どのようなものだったのでしょうか。
目次
ビリオネアの3つのパターン:事業の成功、事業売却、投資
王室のメンバーや代々領地を受け継いできたなど特殊な例を除けば、ビリオネアが資産を築き上げた方法には3つのパターンがあります。
1つ目のパターンは、事業が成功し多額の利益を得たパターンです。これはもっともポピュラーなルートで、毎年フォーブスが発表する長者番付にランクインしているビリオネアたちはほとんどが事業の成功とその後の株式公開などによって利益を得ています。
次のパターンは、事業売却です。アメリカの人気リアリティ番組『シャーク・タンク」を運営していたマーク・キューバンは、40歳の時にマイクロ・ソリューションズ社を売却してミリオネアとなり、ブロードキャスト・ドットコムも売却したことでビリオネアになりました。このように事業の成功と比べれば件数こそ少ないものの、大きく成長した事業の売却はビリオネアになるメインルートのひとつといえます。
最後にあげられるのが、投資によってビリオネアになったパターンです。世界的に有名な投資家ウォーレン・バフェットは、株式ブローカーや証券アナリストとして働いたのち、投資のパートナーシップであるバフェット・アソシエイツを設立。その後バークシャー・ハサウェイを買収し、過去50年間の年間平均リターンが約20%という驚異的な数字をたたき出したことで、ビリオネアの上位にランクインし続けてきました。
事業の成功によって資産を築き上げたビリオネア
こうした3つのパターンのうち、ビリオネアがもっとも多いのは事業で成功したパターンです。彼彼女らはまず事業を大きく成長させ、その後株式公開等によって自社株式の資産価値を上げ、大きな利益を得てきました。具体的にはどのような事例があるのでしょうか。
ジェフ・ぺゾス:株式公開から9万%以上のの成長を遂げたAmazon株
ジェフ・ぺゾスはアメリカ、ニューメキシコ州に生まれ、スタートアップ企業Fitelやヘッジファンド・D.E.ショーなどで働いたのち、Amazonを設立しました。インターネットの爆発的な普及拡大に目を付け、最初はオンライン書店としてはじまったAmazonは徐々に販路を広げ、創業から3年後に株式公開を果たします。
その後もアマゾン・ウェブ・サービスやAmazon Kindle、Amazon Primeサービスなど画期的なサービスを展開し、株価は上昇を続けていきました。2021年2月現在でアマゾンの株価は3,000ドルを超えており、株式公開直後の株価と比べると9万%以上の成長を見せたことになります。
ぺゾスはアマゾンの最大の株主として株式の約11%を保有しており、それはぺゾスの大きな富の源となりました。フォーブスの発表によると、ぺゾスは2020年時点で1978億ドルの資産を保有しており、まさに事業と株式公開によって多額の資産を得たのです。
また2021年2月には自社株と個人資産が過去最高を記録したタイミングで、CEO退任を発表。今後もぺゾスは執行会長としてアマゾンに残り、宇宙開発ベンチャーや慈善活動により多くの力を入れる意向を表明してます。世界トップクラスの資産とこれまでのビジネスキャリアでもって、ぺゾスはAmazonと同様にこうした事業や活動も世界から注目されるビジネスにしていくことでしょう。
ラリー・ペイジ:大学の研究からはじまったGoogleの株式は85ドルから約1900ドル以上に
ラリー・ペイジはアメリカ、ミシガン州に生まれ、スタンフォード大学院でウェブ検索エンジンに関する論文を執筆したのち、1998年にGoogle社をセルゲイ・ブリンとともに共同設立しました。その後検索されたキーワードに応じた広告を表示するサービスをはじめ、莫大な利益を得ていきました。
2001年までペイジはGoogleのCEOを務めたのち、退任。ただその後もGoogle関連の事業には積極的に携わっていました。そして2011年ペイジは再度CEOに就任し、経営陣を再編したのち、Google+やChromebook、GoogleGlassなどをローンチしています。
しかしGoogleの急拡大により企業構造が複雑化すると、2015年にはGoogleの親会社にあたるアルファベットCEOに就任。グループ会社の運営にあたるとともに、新しい事業に取り組んでいたものの、2019年にはCEOを退任し、Googleのスンダー・ピチャイが就任することが発表されました。
ペイジの資産に目を向けてみると、2004年30歳の時にビリオネアの仲間入りを果たしています。500億円以上の資産を保有し、2020年にフォーブスが発表したランキングでは13位にランクインしています。
その資産の形成に大きな影響を与えたのは、Googleの株式公開でした。2004年8月19日には1株あたり85ドルで株式公開を果たし、その後も株価は上昇。2021年2月現在で1900ドルを超えているため、こちらもとてつもないレベルの株価上昇になったことになります。
ペイジはこうした資産を小惑星での鉱業を目指すプラネタリー・リソースやイーロンマスク率いる電気自動車事業テスラ、そして義理の姉が創業した子どもにあわせた本を送る事業トウィグテールにも出資。2006年には父親の名前を冠したカール・ビクター・ペイジ記念財団を設立し、慈善事業にも力を入れるといった活躍を見せています。
マーク・ザッカーバーグ:フェイスブック株式上場で最年少ビリオネアの仲間入り
マーク・ザッカーバーグは1984年アメリカ、ニューヨーク州ホワイト・プレインズに生まれました。両親ともに医者という裕福な家庭で、12歳の時には父によってコンピュータを買い与えられましたが、これは街ではじめてのことでした。ザッカーバーグはあっという間にプログラミングを習得し、歯科医の父親をサポートする受付システム「Zuck net」を開発、早くからその才能を示していました。
ハーバード大学に入学すると、どの学生がどの授業を履修しているかリスト化した「Course Match」、学生の容姿を格付けする「Facemash.com」を設立。しかし「Facemash.com」は学内で批判を受け、大学当局によって4時間でクローズさせられてしまいます。
しかしザッカーバーグは諦めず、19歳のときには学生同士が交流を図るための「Thefacebook」を開発。最初はハーバード大学の学生に限定されていたものの、スタンフォード大学やコロンビア大学など全米の大学に広がっていき、2006年9月には一般にも解放されました。
この事業はすぐにPayPal共同設立者であるピーター・ティールの目に留まることになり、2004年9月には50万ドルの出資を受けることに成功。これによってザッカーバーグは大学を中退し、会社の運営に乗り出すことになります。
フェイスブックは2005年には1270万ドル、2006年に2750万ドルの資金を得ることに成功し、2012年5月12日には38ドルで株式公開を果たします。このIPOによって160億ドルの資金を調達し、テクノロジー業界の株式公開としてはアメリカ市場最高額を記録しました。
またフェイスブックは2012年にInstagramを10億ドルで買収。Instagramはリリースから2年しか経っていないのにも関わらず、すでに3000万人以上のユーザーを有していたこともあり、買収を急いだものと考えられています。この買収が大きく影響し、フェイスブックは2017年には5000億ドルと10倍近い成長を遂げました。2014年2月にメッセンジャーアプリWhatsApp Messengerを190億ドルで買収。こちらもフェイスブックの成長に大きな影響を与えました。
ザッカーバーグの資産に着目してみると、2008年にはIPOにより総資産が10億ドルを超え、ビリオネアの仲間入りを果たしています。この時ザッカーバーグは23歳の若さで、事業による利益でビリオネアになった例としては最年少を記録しています。
フォーブスのランキングを見ても、40歳以下で10位以内にランキング入りを果たしているのはザッカーバーグしかおらず、フェイスブックの成長がザッカーバーグの資産形成に果たした大きさがうかがえます。
事業の成功や自社株でビリオネアになる
興味深いデータとして、資産10億円を超えると自社株やプライベートビジネスが占める割合が大きくなるというデータがあります。また1000億円を超えると、資産の6割以上が自社株やプライベートビジネスで占められているというデータもあり、これは多くのビリオネアたちが事業に成功し、株式の資産価値が向上したことによって資産を形成してきたという事実を示しています。
このパターンはビリオネアの中ではもっとも一般的なパターンですが、その一方で事業の上場という並大抵ならぬ成功が必要になります。またその後の事業の成長が見込めなければ、株式の値上がりも期待できません。つまりビリオネアたちは事業の始まりにおいても、その後の運営においてもフロントラインに立ち続けているということを意味しているのかもしれません。