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トレンド(動向)

戦後最大の失業率!
どうなる?アメリカ経済

戦後最大の失業率! どうなる?アメリカ経済

新型コロナウイルスの感染拡大で経済が壊滅的な打撃を受けているアメリカの4月の雇用統計が8日に発表され、失業率は14.7%と、1930年代の世界恐慌以降で最悪の水準となった。

(2020/5/9 BBC)

アメリカの雇用統計が発表されましたね。

大方の予想通り、リーマンショックを上回る数字を叩き出しました。

以前こちらの記事でも指摘しましたが、失業率こそ世界恐慌時には及びませんが、失業者の絶対数では世界恐慌を上回る過去最大の数字(2050万人)となっています。

(世界恐慌時の失業者数は1200万人と言われています。)

その、一方GAFA(Google,Apple,Facebook,Amazonの頭文字)とマイクロソフトの5社の時価総額の合計が東証一部上場企業2170社の時価総額合計を上回った、というニュースもあり、アメリカの巨大IT企業の好調ぶりがうかがえます。

(2020/5/8 日経新聞)

今回の記事では失業率14.7%の数字の裏側に潜む事情、アメリカ経済のファンダメンタルズ(経済の基礎的諸条件)を仮説検証しながら、今後のアメリカ経済の行方を占っていきたいと思います。

目次

まずはアメリカの労働環境を知ろう

雇用統計とは?

まずは用語の解説です。

アメリカ雇用統計とは労働省が毎月第1金曜日(まれに第2金曜)に発表している経済指標です。

経済指標の中では最も重要な部類に入り、株・FXをやっている人でこれを知らない&見ていない人はかなりヤバいと言わざるを得ません。

雇用統計でみる部分は『 非農業部門雇用者数 』と『 失業率 』です。

非農業部門雇用者数の推移(出典:Investing.com)

まず非農業部門雇用者数とは全米の自営業、農業従事者を除いたおよそ40万社の給与支払い帳簿を元に作成されるものです。

これにより前月でどれだけ非農業部門で雇用が増減したのかがわかります。

後述の失業率は家計サンプル調査であり、事業所ベースの調査サンプルである非農業部門雇用者数はFRBも注目している指標です。

上の図はここ数年の増減をグラフ化したものですが、先月の統計がいかにヤバいものか一目でわかりますね。

失業率の推移(出典:Investing.com)

続いて失業率ですが、こちらは実は6段階の指標で発表されています。

私たちが普段失業率として目にしている数字は中位グループのU3にカテゴライズされている数字です。(ここでは  U1からU6までの定義は省略します)

失業率の対象は16歳以上の男女であり、労働の意思のない人(いわゆるニート)は統計対象から外されています。

こちらもグラフをみるととんでもない事態になっているのが目に見えてわかりますよね。

なお、雇用統計には上記以外にも平均時給や労働参加率など様々なデータが掲載されているので、興味があり英語力に自信のある方は米国労働省のサイトからチェックしてみるとよいでしょう。

レイオフとは?

アメリカの労働環境を語るうえで外せないキーワードに『 レイオフ 』があります。

レイオフとは日本語だと「 一時的な解雇 」であり、事態が好転したら再雇用してもらえる、といった認識がされていることが多いですが、実態は再雇用の機会はほとんどなく、日本で言うリストラとほぼ同じ意味のようです。

アメリカと日本では労働者の採用方法にも違いがあります。

日本では皆さんも経験してきたように新卒一括採用をして、その後トレーニングをして各部署に配置する、といった方式です。

対するアメリカでは必要なポストに空き(またはポストを新設した)が出た場合に採用をする、といった考えです。空白ができたらそこを埋める、といったイメージですね。

なので例えば支社を閉鎖した場合などはそこの従業員は全員レイオフされます。日本企業のようにうまく配置転換とかはしてくれないようです。

ただ、再就職先の斡旋や転職コンサルタントを付けてくれるなど再就職支援は日本と比べると充実しています。

解雇しやすくするだけでなく、きちんと再就職もしやすくする環境が整って初めて労働市場に流動性が生まれるわけですね。

今回のコロナショックによる失業者の増加は特にレジャーや小売り、外食分野で目立っています。

これらの企業が持ちこたえてロックダウンが解除されたのちに営業再開できれば、失業率は改善に向かうかもしれませんが、そのまま倒産してしまう可能性も十分あります。

どっちに転ぶか引き続き注視していきたいところです。

なお、レイオフの仕組みについてはこちらのゆうさんのブログに詳しく書いてあるので、興味のある方は読んでみてください。

好調なテック企業と苦境のオールドエコノミー企業

(出典:東洋経済)

今回の雇用統計発表の数日前、アメリカ企業の第1四半期の決算発表が相次ぎました。

この章ではアメリカ企業の動向を業界別にみていきましょう。

GAFA+M

GAFA+Mとは冒頭で述べた巨大IT企業5社のことです。

これらのQ1決算と今後の展望をダイジェストで紹介したいと思います。

『Google』

売上高:411億5900万ドル

前年同期比:+13.3%

従来の広告収益は落ち込んだものの、クラウド関連製品・サービスの売上が大幅増。自動運転車開発部門のウェイモ(Waymo)は先日、第5世代の自動運転システムを発表、これまでトランクスペースを占めていたコンピュータを床下に格納することに成功しました。

大手自動車メーカーなどと組んで、自動運転システムの開発に取り組んでおり、広告収益に頼らないビジネスモデルの構築を目指しています。

『Apple』

売上高:583億1300万ドル

前年同期比:+0.5%

従来の主力商品だった、「 iPhone・iPad・Mac 」の売上は減少したものの、「 Apple Watch 」「AirPods」などのウェアラブル端末の販売が2桁増を記録しました。

コロナショックにより、中国国内の店舗休止や工場停止による部品の供給の遅れなどが売上が微増に留まった要因とみられています。

また「 App Store 」、「 Apple Music 」「 Apple TV 」などのサブスクリプション部門が好調に推移したおかげでプロダクト部門の売上減少を補うことができました。

『Facebook』

売上高:174.4億ドル

前年同期比:+17.0%

月間アクティブユーザー数(MAU)が市場予想を上回り、傘下のInstagramやWhatsAppの利用も好調のようです。新たに1万人の雇用計画も発表しており、好調な業績が伺えます。

また新規事業分野であるVR(仮想現実)事業の成長も見逃せません。

主力のVRヘッドセット「 オキュラス 」関連の売上は3億ドルに迫っており、来年には新モデルの発表も予定されています。

ブルームバーグの報道によるとアップルも2021~22年にVRヘッドセットの発売を目指しており、この分野の更なる成長が予想されます。

『Amazon』

売上高:754億5200万ドル

前年同期比:+26.4%

5社の中で最も売上を記録したAmazon。コロナショックによる巣ごもり需要の増大が大きいと思います。ただ、需要増に伴う人員の雇入れによりコストがかさみ、当初40億ドル相当を見込んでいた利益は25億ドル程度にとどまりました。

クラウドサービスであるAWSやAmazonプライムなどのサブスクリプション事業は2桁増と好調に推移しています。

『Microsoft』

売上高:350億2100万ドル

前年同期比:+14.5%

プロダクト関連の売上は+2.7%と小幅な伸びにとどまった一方、サービス関連の売上が+26.6%と大幅に増加しています。

特にクラウドサービス「 Azure 」は+59%を記録するなど牽引役となっています。

コロナショックによるリモートワークの需要増で「 Microsoft Teams 」などのグループウェア関連も堅調な伸びをみせています。

リモートワークの定着・需要増の傾向から、今後も好調な業績を維持しそうです。

オールドエコノミー企業

好調な業績を維持するGAFA+Mとは対照的に伝統的な企業は苦戦を強いられ不況です。

直近ではコロナショックによる影響で、アパレル大手のJクルー、百貨店大手のニーマン・マーカス、フィットネス大手のゴールドジムが米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請しています。

また、原油高とコロナによる移動制限などでエクソンモービルも売上2桁減を記録しています。

同様に2桁減を記録した企業にはボーイング、フォードモーター、ユナイテッド航空などがあります。

こうした企業はリモートワークの推進、旧来の習慣の廃止(ペーパーレス化など)、カメラメーカーから化粧品、医薬品メーカーへと舵を切った富士フイルムのように事業形態の思い切った転換などが求められるでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

アメリカ経済のリーマンショックを大きく上回る失業率のインパクトはやはり相当なものでしたね。

まもなくロックダウンが解除され、レイオフされていた人々が戻ってきて経済は再び元通りになるという楽観論と、コロナの影響が長引いて失業率と倒産件数の更なる増加を見込む悲観論が両立しているのが現在の状態となります。

好調を維持するGAFA+Mにも行き場を失ったヘリマネが流入しているとみられており、単純に株価だけで好不況を判断するのは早計かと思います。

いずれにしても今後の雇用統計、GDP速報値がコロナショックの本当の経済ダメージを白日の下にさらすことになるでしょう。

今回は以上になります。

最後までお読みいただきありがとうございました。


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