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不動産コラム

21世紀最大の危機!?
再び世界恐慌が起こる可能性は?

21世紀最大の危機!? <br>再び世界恐慌が起こる可能性は?
全世界の新型コロナ感染者(左)と死者(右) 2020/4/17時点

新型コロナウィルスの感染拡大は一向に収まる気配が見えません。

『 リーマンショックを上回る規模の経済危機だ 』

『 大恐慌が再びやってくる 』

といった報道も散見されます。

こうした報道に対して漠然と不安を感じてしまう気持ちもわかります。

とはいえ、なんとなく不安、怖い、と思っているだけでは何も解決しません。

今回の記事では1929年の大恐慌、そして記憶に新しい2008年のリーマンショックが経済にどれだけダメージを与え、その後世界はどう立ち直ったのか、を解説しながら、今後の経済情勢を仮説検証していきたいと思います。

目次

大恐慌(Great Depression)

大恐慌時のアメリカGDP※ピンク部分が大恐慌シーズン

1929年10月24日(暗黒の木曜日)

1920年代のアメリカは資本主義の黄金期を迎えていました。

第一次世界大戦で直接の戦火を受けず、荒廃したヨーロッパの復興を後押しする役割を担ったことで、アメリカは債務国から債権国へ転換しました。

輸出が増え、内需が拡大したことで、『 大量生産、大量消費 』体制へ転換したアメリカは空前の好景気を謳歌します。アメリカのGDP、株価(NYダウ)も直前まで右肩上がりで上昇していました。

ところが、1929年10月24日(木)、突如としてゼネラルモーターズ(GM)の株価が80%下落、翌週10月28日(月)にはダウ平均が13%下落し、20世紀最大の経済ショックとなった世界恐慌の幕開けとなってしまいました。

この余波は各方面に波及し、全米の銀行の1/3が潰れ、失業率は最高で25%を記録、GDPは1929年から33年の4年で3割弱下落、ダウ平均株価も9割下落と想像を絶するダメージを経済に与えました。

アメリカの失業率※ピンク部分が大恐慌シーズン

全米中に失業者があふれ、街には食料の配給を求めて人々が列をなしたと言われています。 かろうじて職を失わずに済んだ人も平均して35%も給料がダウンするなど苦しい生活を余儀なくされました。

大恐慌(Great Depression)という言葉が使われたのは、後にも先にもこの1度のみです。

各国の対策・アメリカ

1933年にフランクリン・ルーズベルト大統領が就任。

ニューディール政策を柱とした景気刺激策を実施しました。

ここではニューディール政策の詳細には触れませんが、紆余曲折はあったものの、ルーズベルト大統領が就任した1933年からアメリカのGDPが底を打ち回復傾向に。 1937年には恐慌前の水準を回復しました。(上グラフ参照)

第32代アメリカ大統領 フランクリン・ルーズベルト(1882~1945)

アメリカ経済のダメージ期間は4年にわたり、回復には8年もの歳月を要しました。 この後、太平洋戦争が勃発しアメリカ経済は戦時体制の影響もあり急拡大し、戦後は超大国としての地位を確かなものとしました。

各国の対策・イギリス&フランス

アメリカ発の世界恐慌は当時広大な植民地を有していたイギリス、フランスにも波及しました。

イギリスでは史上初の労働党出身の首相であるラムゼイ・マクドナルドが1931年に挙国一致内閣を組織、ウエストミンスター憲章を制定し、イギリス連邦が発足しました。

イギリス連邦にはカナダ、オーストラリア、南アフリカ、インドなどが含まれていました。

これらの自国の経済圏だけで完結させる経済体制を『 ブロック経済 』と呼びます。フランスもイギリスと同様の政策を採用しました。

英仏のように植民地を『 持てる国 』は自給自足体制で恐慌を乗り切ることができましたが、こうしたブロック経済から締め出された植民地を『 持たざる国 』、代表例がドイツ、イタリア、日本はファシズム体制のもと、軍備を拡大していきます。

各国の対策・日独伊

アメリカでルーズベルト大統領が就任した1933年、ドイツではヒトラー内閣が発足、アウトバーン建設に代表される公共事業の実施などで1937年には完全雇用をほぼ達成します。

しかし、資源不足を解消するには至らず、オーストリアやチェコスロバキアの併合といった度重なる領土拡大の末、第二次世界大戦に突入します。

イタリアでは1922年にムッソリーニ率いるファシスト党政権が成立しました。

第一次世界大戦では戦勝国となったものの、不況に喘いでいた国内情勢を打開するために植民地獲得に乗り出し、1936年にエチオピア、1939年にはアルバニアを併合します。

一方、日本は不況打開のために中国大陸に進出します。

1931年の満州事変後は日中戦争、太平洋戦争と泥沼の戦争状態に陥ることになります。

このように経済危機は戦争の引き金となってきた歴史があるため、『 ポスト・コロナ 』において、直接戦火を交えるものであれ、経済戦争であれ、さらなる苦難が待ち受けているのでは、と考える識者もいるのはある意味当然のことと言えます。

日独伊3国の指導者たち(左から近衛文麿、ヒトラー、ムッソリーニ)

リーマンショック

アメリカGDP 出典:世界銀行

日米経済への影響

2008年9月15日、アメリカの大手投資銀行であるリーマン・ブラザーズが経営破綻しました。負債総額は6000億ドル(約64兆円)となり、アメリカ史上最大の企業倒産でした。アメリカの失業率は一時10%の大台を記録しました。

アメリカの失業率 出典:マネックス証券

日本でも5.1%というバブル崩壊後の最悪水準だった5.4%(2002年)に迫る数値を記録しました。(データは総務省統計局より)

日経平均株価は2008/9/12の12,214円から、10/28には6,994円と半分近くに下落し、当時は『 100年に1度の金融危機 』と言われ、若者の就職状況も再び悪化、2008年の年末には年越し派遣村が話題になったことも記憶に新しいと思います。

出典:モーニングスター

リーマンショック当時は日米を始めとした先進国経済が落ち込んだ一方で、BRICS諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国)は高成長を維持し、世界経済全体としてはマイナス0.1%で持ちこたえることができました。

リーマンショックから2年後の2010年は世界経済はプラス5.4%の成長を記録、この年のアメリカGDPはリーマンショック以前の水準を回復し、再び上昇基調へと入ります。

なおアメリカの失業率はその後も高水準を推移し、リーマン前の水準(5%台)に戻るのは2014年後半に入ってからです。

GDPを基準に考えると、アメリカ経済のダメージ期間は約1年、回復には2年の歳月を要した計算となります。物凄く乱暴に言ってしまうと、リーマンショックのダメージは1929年の大恐慌の1/4、とイメージできるかもしれません。

コロナショック

リーマン以上大恐慌未満

これまで1929年の大恐慌と2008年のリーマンショックについてみてきました。

ここでは今回のコロナショックがどの程度のダメージをもたらすのか、といったことをデータを交えて仮説検証していきたいと思います。

まずはリーマンショックとの比較です。

リーマンショック自体は大手投資銀行の破産がきっかけとなって、まず金融システムの崩壊が懸念されました。やがて、それが雇用や個人消費といった足元の実体経済に影響を及ぼし、失業率の増大に繋がりました。

対して今回のコロナショックでは敵が『 未知のウィルス 』であり、感染拡大を食い止めるため、各国当局はロックダウンを実施し、実体経済の流れを即座にストップさせました。

その影響で最大の感染者・死者数(2020/4/17)を記録しているアメリカでは失業者が一気に増加、新規失業保険申請件数は記録的な伸びを記録しました。(下図参照)

出典:アメリカ労働統計局 BBCより

アメリカで非常事態宣言が出されてから、4月中旬までの4週間で失業保険申請件数は2200万件となっています。(2020/4/17 NHK)

参考までにリーマンショック時にアメリカの失業者数は最大で1500万を記録したと言われています。今回のコロナショックはいまだ拡大途上であり、すでにリーマンショック時を越えていることになります。

アメリカの大手銀行であるJPモルガン・チェースは第2四半期(2020年4~6月)の米失業率は20%に達すると予測しています。また米セントルイス連銀のボラード総裁は同じく第2四半期に失業率は30%になる可能性があると言及しています。(2020/3/23ブルームバーグ報道より)

米国家経済会議(NEC)のクドロー委員長がアイデアとして『 戦時国債 』発行について触れている報道もあり、いかにアメリカ国民がコロナショックを非常事態と捉えているかが感じられるエピソードだと思います。

実際アメリカの失業率がどこまで上昇するかは未知数ですが、以上のことから少なくともリーマン以上大恐慌未満、の経済危機となりそうです。

世界全体がリセッションへ

国際通貨基金(IMF)は14日発表した最新の世界経済見通しで、2020年の世界全体の成長率を前年比3・0%減として、1月の予測(3・3%増)から大幅に引き下げた。 (2020/4/14 朝日新聞)

先日IMFがコロナショックを考慮した世界経済の見通しを発表しました。 下がIMFの予測です。

IMF世界経済見通し(2020/4/14)

IMFのギータ・ゴピナート調査局長は、

「経済の崩壊の規模と速度はかつて経験したことがない。大恐慌以来の不況になる」

と悲観的な声明を発表しています。

参考までに1929年の世界経済はマイナス10%と言われています。

IMFは来年2021年の成長率はプラス5.8%に回復するという見通しを示しました。

ただし、これは2020年内にコロナが終息した場合の見通しであり、米ハーバード大学の研究者が発表したように2022年まで影響が続くようだと、世界経済はより深刻なダメージを受ける可能性があります。

欧米の基準では2四半期連続でマイナス成長を記録すると景気後退(リセッション)と見なされます。コロナショックの影響で世界全体がリセッション入りするのはほぼ間違いないでしょう。

(2020/4/17 日経新聞より)

最新の速報で中国が1992年に四半期ごとにGDPを公表するようになってから初のマイナス成長を記録した、との報道がありました。中国の2020年第1四半期の成長率はマイナス6.8%です。

現在はやや収束傾向にある中国でこの数値ですから、いまだコロナショックが拡大中の欧米はもっと悲惨な数値が出そうな気がします。なおアメリカの第1四半期のGDPは例年であれば4月最終週に商務省より発表される予定です。

もともと公的債務の割合が大きいイタリアなどはIMFの予想を上回り、2桁幅のマイナス成長を記録する可能性は十分にあり得るでしょう。

なお、IMFには日本語版サイトもあり、コロナショックに対する考察や世界経済の見通しといったことを定期的に発信しているので、興味のある方は是非ご覧になることをおすすめします(IMF日本語サイト→https://www.imf.org/external/japanese/index.htm

それでも大恐慌にはならない

ここまででコロナショックの影響を検証し、リーマンショック以上のインパクトは確実、と結論付けました。そして現在進行形の出来事であり、経済見通しはかなり悲観的であることも検証できました。

『 このまま収束しなければ世界恐慌並みかそれ以上の大惨事にならないの? 』

と思われる方もいるでしょう。

結論を先に言うと大恐慌にはなりません。

理由を下記にまとめてお話します。

大恐慌をきっかけに近代マクロ経済学が確立されたから

20世紀最大の経済学者の一人にケインズ(1883~1946)がいます。

彼は近代マクロ経済学を確立した人物として知られ、先に述べたアメリカのニューディール政策の強力な後押しとなりました。

ケインズの理論を簡単に要約すると、不況時には財政出動など政府による積極的な介入を促すものです。

イギリスの経済学者 ジョン・メイナード・ケインズ(1883~1946)

先に述べたアメリカのニューディール政策はケインズの理論がもとになっています。

1929年当時のアメリカ大統領であったフーバーは新古典派経済(=市場経済は民間にまかせ、政府は極力介入しない)の信奉者であったため、当初は極力不介入の姿勢を取りました。

しかし、恐慌の勢いを止めることはできずルーズベルト大統領に交代します。

ニューディール政策が功を奏し、アメリカは恐慌から脱却することができました。

2008年のリーマンショックでもマクロ経済学が活躍します。

当時のFRBのバーナンキ議長は1930年代の大恐慌および日本の平成バブル不況の研究の第一人者でした。

当時『 100年に1度の金融危機 』、と言われていたリーマンショックも過去の歴史に学んだバーナンキ議長の活躍でアメリカ経済は最小限のダメージで済んだのも、ケインズが創始した近代マクロ経済の功績といえるでしょう。

このように戦中・戦後を通して『 近代マクロ経済学 』という学問が確立し、人類は不況に対して強くなった、ということです。

国際協調体制が確立されたから

第二次世界大戦後に金融システムの安定化を目的に先ほどのIMF(国際通貨基金)と世界銀行が設立されました。

いまや世界経済はどの地域も密接に繋がっており、ある地域で起こった金融危機は程度の差こそあれ世界中に瞬時に波及します。

そのような状態になった時にIMF、世銀、そして各国政府が連携して対処するときで出血を最小限に抑えることができます。

今回のコロナショック対策としてIMFは1兆ドル(約108兆円)の融資枠の用意があることを表明しています(2020/4/4 日経新聞より)

また、世界銀行も新型コロナウィルス対策として今後15か月間で1600億ドル(約17兆3000億円)の予算を投入する予定です。(2020/4/2 世界銀行HPより)

これらの予算は加盟各国の医療対策であったり、中小企業対策、貧困層の支援に使われる予定です。

世界銀行のコロナウィルス対策支援の例 出典:世界銀行

人類はこれまで未曽有の危機を乗り越え、進歩しているから

最後に少し希望的観測になってしまいますが、上記の通りこれまで人類にとっての危機はたくさん訪れてきました。パンデミックで言えばペスト、天然痘、スペイン風邪、戦争で言えば二度の世界大戦、どれも人類を滅亡させるには至らず、人類はその数を増やし、経済規模も拡大させてきました。

下の図は記録が残るおよそ120年前から現在までのニューヨークダウの値動きになります。

120年間ではもちろん良いことも悪いことも両方ありました。

当時の人類からすればこの世の終わりに近い出来事もあったことでしょう。

それでも人々はそれを乗り越え、世界を拡張させてきました。

読者の皆様も日々感じているように現代は変化が早い時代です。

いまこうしている間もコロナと戦っている人々がいます。

特効薬や有効な治療体制が確立されるのも時間の問題でしょう。

人類はコロナには負けないと私は信じています。

まとめ

いかがでしたでしょうか?

日々の報道や街の様子をみていると、なんとなく気持ちが暗くなったり、落ち込んだりしてしまいます。

不動産のリスクの記事でも触れましたが、不安のもと=リスクを知ることが、一番の防御になります。

しっかり学ぶこと、事実を知ることで、不安を煽る人に惑わされることはなくなります。

これをきっかけに働き方、人との付き合い方、お金に対する考え方を見つめ直すいい機会になる、とプラスに考えていきましょう。

これまで検証してきたデータから予想すると、コロナショックによる経済へのダメージは2年ほど、回復には4年ほどかかるのでは?と1つの仮説を立てることができます。

ただし、これらは感染者の拡大の増加率や、医療体制、ロックダウンの期間などによって変動するので、引き続き情勢を注視するようにしましょう。記事冒頭に紹介した、世界の感染者の状況のリンクも貼っておきます。

https://www.worldometers.info/coronavirus/?utm_campaign=CSauthorbio?

今回は以上となります。

最後までお読みいただきありがとうございました。